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24話
しおりを挟む「どういうことだ、ディラン、アリコーン様の言うことは本当なのか!?」
どうやら陛下は知らなかったみたいね。……いや、わたくしも知らなかったのだけど。ディラン殿下はそんなに女性関係が乱れていたのかしら……。……学ぶことにばかり頭がいって、ディラン殿下のことにはあまり興味がなかったから……。
そもそも、ディラン殿下もわたくしにあまり興味なかったと思うし……。
「……本当ですよ、父上。彼は、色々な女性に手を出していました」
肯定したのはライオネル殿下だ。そして、彼がすっと手を上げると、彼の側近だろう男性が報告書……のようなものを陛下へ手渡した。
「……兄が手を出した女性の人数、どのような結末になったのかを詳しく調べました」
「ライオネル!」
「……王族が、出入りしてよい場所なのでしょうか?」
「……ディラン、ここに書かれているのは本当なのか!」
……わたくしたちの存在を忘れて、身内で修羅場になっているような気がして……。リアンはそんな彼らのことを見てゆっくりと息を吐いた。びくりと肩を震わせるディランと陛下。ライオネル殿下は、「本当に僕の身内が申し訳ない……」と頭を下げた。
「王族ってそんなに偉いのー? 人間なのにー?」
無邪気に……いや、無邪気を装って、かな。……リアンがわたくしの手をきゅっと握りながら周りの人たちを見る。
「リアン、王族の人たちはね、平民にはないプレッシャーの中で生きているのよ」
「……えー? あのディランって人もー?」
「……それは、ええと……、どうなのかしら?」
……正直、ディラン殿下のことはよくわからない。ディラン殿下はイライラしているような表情を浮かべていた。それから、あの女性も。と言うか、女性のほうがディラン殿下に食って掛かっていた。
「どういうことですか、ディラン殿下! 私を王妃にしてくれるって言ったのに!」
「そんな話を今持ち出すな!」
「私のことを愛しているって、王妃にしてくれると言っていたではありませんか!」
「わぁ~、人間って嘘つきー!」
はしゃぐようにそう言うリアンに、わたくしは何も言えなかった。ディラン殿下、彼女にそんなことを約束していたのですか……。
「――だから人間は嫌いなんだ」
ぽつり、とリアンが呟く。……リアンのそんな低い声を聞いたことがなくて、わたくしはリアンへ視線を向けた。
「強欲で、嘘つきで、同族を平気で殺すお前たちが、嫌いだよ」
「あ、アリコーン様……!」
縋るような声を出したのは陛下だ。……確かに、リアンの言う通り、人間が欲深く……戦争が始まれば……いえ、戦争がなくても毎日誰かが誰かの命を奪っている。
「ユニコーンたちがなぜ、そのような者たちを守らなければならない? 否、守る必要はないと判断したからこそ、神帝国へと移住したのだ。それなのに、お前たちは本当に救いようがない程の愚かさをボクに見せているのがわからないのか」
――リアンがぎろりとこの会場に居る人たちを睨みつける。……リアンが怒っている。わたくしは、リアンの手を少し強く握った。
「イザベラ……?」
「あなたは……この国を憂いてくれているのね……」
弾かれたようにわたくしを見るリアンに、わたくしは微笑みを浮かべる。……わたくしは、リアンが優しいことを知っている。共に過ごした時間を、わたくしは信じているから。
「ディラン殿下。……ヴァプール王国の皆様、……どうか、リアンの言葉の意味を……良く考えてください。お願いします……!」
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