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22話
しおりを挟む国王陛下にお会いするのも久しぶりだ。ヴァプール王国の国王陛下。心労からかちょっとお痩せになったような……気がする……? 傍にはわたくしとの婚約破棄を言い渡したディラン殿下と、その時隣に居た見目麗しい女性。
さらに、第二王子のライオネル殿下も居た。……これは、もしかして……どちらかが王太子に相応しいかを、決めるパーティー……?
「な、なんだそのよくわからない生き物は!」
≪ボクのことー?≫
「多分ね」
アリコーンが翼をバサバサと動かす。……わたくしはゆっくりと深呼吸をしてから、そっとリアンの翼に触れた。
「彼はアリコーン。……有翼のユニコーンです」
ざわざわと会場の人たちがざわめく。わたくしはもう神帝国に身を置いているから、この国の人たちにどんな目で見られても大丈夫。そもそも、わたくしがこの国から出て行く理由を作ったのはディラン殿下だしね。
「本当にお前がユニコーンの乙女だったというのか!?」
「だった、じゃないよ、兄さん。彼女は現ユニコーンの乙女だ」
ライオネル殿下が眉を顰めてそう言った。……どうやら、ライオネル殿下はディラン殿下よりもこちらのことを尊重してくれるみたい。
「お久しぶりです、イザベラ嬢。……半年前のことを、兄に代わってお詫び申し上げます」
「……ごきげんよう、ライオネル殿下。殿下からの謝罪は受け取れませんわ」
わたくしの言葉に、ギっとわたくしを睨みつけるディラン殿下。
≪あいつが悪い人?≫
「悪いというか……、考えが甘い人……?」
「聞こえているぞ貴様ァッ!」
「……ユニコーンの乙女にそんな言葉遣いとは、国王陛下はどうやら子どもに甘いようですね」
ランシリル様の言葉に、国王陛下がビクッと震えた。……ランシリル様、そのような冷たい声も出せたのですね……。
「やめないか、ディラン! 本当に、愚息が申し訳ないことを……!」
「国王陛下からの謝罪も受け取れません。……いえ、受け取ったらこの方からの謝罪はないでしょうから」
にこやかにわたくしがそう言うと、リアンもうんうんとうなずいた。リアンがうなずいた姿を見て、「人間の言葉がわかるのか!?」とディラン殿下が変にパニックを起こす。
……わからなかったら何を言っても良いと思っているのかもしれない……。
「……ディラン殿下、一方的に婚約破棄を言い渡したことに対して、何か理由があるのでしょうか?」
「そんなの、お前がユニコーンの乙女だと知らなかったからだ! なぜ言わなかった!」
「ユニコーンの乙女は国の繁栄に繋がります。イザベラ様を狙う人を作らないためですよ」
ランシリル様の言葉に、ディラン殿下はぐっと言葉を飲む。……こんな人だったのか。結局わたくしたち、互いの表の部分しか見ていなかったのね……。
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