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19話
しおりを挟むヴァプール王国には転移魔法で行くようなので、荷物は少な目で良さそうだ。……それにしても、ヴァプール王国の自然災害は大丈夫かしら……。ランシリル様は、自然の摂理に戻るだけっておっしゃっていたけれど……。
それじゃあ、わたくしの存在は……。
「イザベラ? どうしたの?」
「え、ええと……ヴァプール王国の天気が気になって……?」
「天気? うーんと、まぁ、それなりに荒れているんじゃない? 天災が少なかったのは、ユニコーンたちがのんびり暮らすために操作してたからだし……」
「え、そんなこと出来るの?」
「うん!」
……ユニコーンってそんなこと出来たの? えっと、じゃあ……ユニコーンの乙女とか関係なく、ユニコーンの住んでいる国は、ユニコーンが暮らしやすいように天気を操作していたってこと……? それはそれで……何とも言えない不思議な感覚。
幻獣と人間が一緒に居るってことのほうが珍しいものね。
「それじゃあ、ヴァプール王国で着る服を用意しようか」
「うん!」
リアンが服を持って来て、それを丁寧に畳んで鞄に入れる。日数的にギリギリになるように届いたようだ。荷物を纏めたらランシリル様に声を掛ける。……彼は目をぱちくりと瞬かせて、それからくすりと笑う。
「すみません、出発は明日です」
「えっ、そ、そうだったんですか……! てっきりすぐに向かうのかと……」
「いえ、準備が終わっているのならすぐに行けますからね。ああ、そうそう。明日、イザベラ様は私が用意した服を着てください」
「……? わ、わかりました……」
こくりとうなずいて、わたくしとアリコーンは……遊ぶことにした。と言っても日光浴するだけなのだけど。神殿の中は広くて、色んな人が住んでいた。リアンも人の身体を得たことで、今まで出来なかった遊びを出来るようになって、子どもたちに好かれていた。……そう、この神殿の中には大勢の子どもが居る。孤児院も兼ねているのかもしれない。
「あ、乙女だー!」
「アリコーン様もいるー!」
リアンはわたくし以外に名前を呼ばれるのはイヤなようで、頑なに「アリコーンって呼んで!」と子どもたちに話していた。大人はそもそもリアンのことを敬っているから、名前で呼ぼうとは思わないようだ。
「ごきげんよう、みんな、元気にしてる?」
「元気だよー!」
「元気ー! 乙女はー?」
「元気よ。ふふ」
小さい子たちは元気に走り回っている。……この神殿、本当に広いわね……。半年経った今でもすべては見て回れていないんじゃないかな。
「今日は人の姿なのー?」
「そうだよー、練習なの!」
「そっかー!」
子どもたちと一緒に笑い合うリアンを見て、わたくしも微笑みを浮かべた。
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