【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。

秋月一花

文字の大きさ
上 下
17 / 38

17話

しおりを挟む

 布を二つ折りにして、首元の部分を切り取る。そして袖の部分になるように切って縫い合わせる。後はちょこちょこ調整しながらローブを仕上げていく。……それをこの色の布分……。
 一日では終わらず、三日くらい掛かった。その間アリコーンはわたくしから離れなかった。そして、アリコーンの家族がこの神帝国に来たことを悟ると、≪挨拶してくる~≫と窓から飛んで行った。嬉しそうに飛んでいくのを見て、何だか心が和んだ。
 ……それにしても、ユニコーンの移動速度ってどうなっているのかしら。馬車で移動するとかなり時間が掛かるって聞いたことあるけど……。わたくしたちは魔法で来たからあっという間だったけど、ユニコーンたちは恐らく走って来たのよね……?
 そして戻って来たアリコーンは……何と人の姿をしていた。わたくしだけではなく、フランクリンの人たちも、神殿の人たちも驚いていた。

「……これは、一体何があったのでしょうか……」
「わ、わたくしにもわかりません……」
「あのねあのね、人の姿になれる魔法を教えてもらったの! これでボクも色んな人とお喋り出来るよ! でもこの姿でアリコーンって呼ばれるの変でしょ? だからイザベラ、名前をつけてつけて!」

 その話し方から、アリコーンであるとわかる。わかるんだけど……! わ、わたくしと同じ年くらいの男の子。だぼだぼの服は、アリコーンのお父様のものだから? 角の部分も翼の部分もそのままだから、どちらかと言うと天使のように見える。キラキラの金髪は柔らかそうに揺れて、澄んだ青い瞳は穢れを知らない生き物ように見えた。

「……ええ……」

 人間の姿になれたら言葉も使えるようになるのか、とか、わたくしと同じくらいの男の子だったりとか、混乱しているところに「名前!」だ。ずっと前から≪名前つけて!≫とは言われていたけれど、……本当にわたくしがつけて良いのかしら?
 ……ちなみにお父様はアリコーンが人間になったことで興奮しすぎたのか倒れたので医務室で休んでいる。お母様も、それに付き添っている。

「名前……つけてくれないの……?」

 うっ。……目に涙を浮かべて、わたくしを見つめるアリコーンに、わたくしは視線をランシリル様に向けてみた。……視線を逸らされた。わたくしが自分で決めろということなのかしら……。

「えっと……じゃあ……、リアン、はどうかしら?」
「リアン?」
「ええ、アリコーンはわたくしの守護者のような感じだから……」
「リアン! ボク、リアンっ!」

 名前を付けるだけでそんなに大喜びするなんて……と思っていたら、ぱぁっとわたくしの身体が淡い光を放った。そして、その光が左手の甲に集まり、何かが浮かび上がる。……これは、一体? と首を傾げると、アリコーン……いえ、リアンはわたくしに向けて無邪気な笑顔を浮かべていた……。
 これ、一体何なのかしら……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

婚約破棄されたら騎士様に彼女のフリをして欲しいと頼まれました。

屋月 トム伽
恋愛
「婚約を破棄して欲しい。」 そう告げたのは、婚約者のハロルド様だ。 ハロルド様はハーヴィ伯爵家の嫡男だ。 私の婚約者のはずがどうやら妹と結婚したいらしい。 いつも人のものを欲しがる妹はわざわざ私の婚約者まで欲しかったようだ。 「ラケルが俺のことが好きなのはわかるが、妹のメイベルを好きになってしまったんだ。」 「お姉様、ごめんなさい。」 いやいや、好きだったことはないですよ。 ハロルド様と私は政略結婚ですよね? そして、婚約破棄の書面にサインをした。 その日から、ハロルド様は妹に会いにしょっちゅう邸に来る。 はっきり言って居心地が悪い! 私は邸の庭の平屋に移り、邸の生活から出ていた。 平屋は快適だった。 そして、街に出た時、花屋さんが困っていたので店番を少しの時間だけした時に男前の騎士様が花屋にやってきた。 滞りなく接客をしただけが、翌日私を訪ねてきた。 そして、「俺の彼女のフリをして欲しい。」と頼まれた。 困っているようだし、どうせ暇だし、あまりの真剣さに、彼女のフリを受け入れることになったが…。 小説家になろう様でも投稿しています! 4/11、小説家になろう様にて日間ランキング5位になりました。 →4/12日間ランキング3位→2位→1位

月が隠れるとき

いちい千冬
恋愛
ヒュイス王国のお城で、夜会が始まります。 その最中にどうやら王子様が婚約破棄を宣言するようです。悪役に仕立て上げられると分かっているので帰りますね。 という感じで始まる、婚約破棄話とその顛末。全8話。⇒9話になりました。 小説家になろう様で上げていた「月が隠れるとき」シリーズの短編を加筆修正し、連載っぽく仕立て直したものです。

あなたの姿をもう追う事はありません

彩華(あやはな)
恋愛
幼馴染で二つ年上のカイルと婚約していたわたしは、彼のために頑張っていた。 王立学園に先に入ってカイルは最初は手紙をくれていたのに、次第に少なくなっていった。二年になってからはまったくこなくなる。でも、信じていた。だから、わたしはわたしなりに頑張っていた。  なのに、彼は恋人を作っていた。わたしは婚約を解消したがらない悪役令嬢?どう言うこと?  わたしはカイルの姿を見て追っていく。  ずっと、ずっと・・・。  でも、もういいのかもしれない。

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

処理中です...