【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。

秋月一花

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17話

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 布を二つ折りにして、首元の部分を切り取る。そして袖の部分になるように切って縫い合わせる。後はちょこちょこ調整しながらローブを仕上げていく。……それをこの色の布分……。
 一日では終わらず、三日くらい掛かった。その間アリコーンはわたくしから離れなかった。そして、アリコーンの家族がこの神帝国に来たことを悟ると、≪挨拶してくる~≫と窓から飛んで行った。嬉しそうに飛んでいくのを見て、何だか心が和んだ。
 ……それにしても、ユニコーンの移動速度ってどうなっているのかしら。馬車で移動するとかなり時間が掛かるって聞いたことあるけど……。わたくしたちは魔法で来たからあっという間だったけど、ユニコーンたちは恐らく走って来たのよね……?
 そして戻って来たアリコーンは……何と人の姿をしていた。わたくしだけではなく、フランクリンの人たちも、神殿の人たちも驚いていた。

「……これは、一体何があったのでしょうか……」
「わ、わたくしにもわかりません……」
「あのねあのね、人の姿になれる魔法を教えてもらったの! これでボクも色んな人とお喋り出来るよ! でもこの姿でアリコーンって呼ばれるの変でしょ? だからイザベラ、名前をつけてつけて!」

 その話し方から、アリコーンであるとわかる。わかるんだけど……! わ、わたくしと同じ年くらいの男の子。だぼだぼの服は、アリコーンのお父様のものだから? 角の部分も翼の部分もそのままだから、どちらかと言うと天使のように見える。キラキラの金髪は柔らかそうに揺れて、澄んだ青い瞳は穢れを知らない生き物ように見えた。

「……ええ……」

 人間の姿になれたら言葉も使えるようになるのか、とか、わたくしと同じくらいの男の子だったりとか、混乱しているところに「名前!」だ。ずっと前から≪名前つけて!≫とは言われていたけれど、……本当にわたくしがつけて良いのかしら?
 ……ちなみにお父様はアリコーンが人間になったことで興奮しすぎたのか倒れたので医務室で休んでいる。お母様も、それに付き添っている。

「名前……つけてくれないの……?」

 うっ。……目に涙を浮かべて、わたくしを見つめるアリコーンに、わたくしは視線をランシリル様に向けてみた。……視線を逸らされた。わたくしが自分で決めろということなのかしら……。

「えっと……じゃあ……、リアン、はどうかしら?」
「リアン?」
「ええ、アリコーンはわたくしの守護者のような感じだから……」
「リアン! ボク、リアンっ!」

 名前を付けるだけでそんなに大喜びするなんて……と思っていたら、ぱぁっとわたくしの身体が淡い光を放った。そして、その光が左手の甲に集まり、何かが浮かび上がる。……これは、一体? と首を傾げると、アリコーン……いえ、リアンはわたくしに向けて無邪気な笑顔を浮かべていた……。
 これ、一体何なのかしら……?
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