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13話
しおりを挟む「アリコーン様は何と?」
「気にしないでください! ……ところで、ユニコーンが神帝国にきたら、ヴァプール王国はどうなるのでしょうか……?」
「……気になりますか?」
こくりとうなずく。わたくしが居なくなることで、王国がどうなるのか……。知るのは怖いけれど、知らないのはもっと怖い。わたくしが真剣な表情でランシリル様を見ると、彼もわたくしを見た。
「今すぐに加護が消えると言うことはありませんよ。徐々に徐々に、ユニコーンの乙女の加護が消えていくでしょう。……それはあなたのせいではありません」
「……加護が消えたら、どうなりますか?」
「……そうですね、恐らく、イザベラ様が王国に居た時にはなかったであろうことが起こると思います」
わたくしが王国に居た時にはなかったこと……。王国は平和だったから、うまく想像出来なかった。
「まずは天気が荒れたりするでしょうね。突然大雨になったり、寒くなったり。逆に暑くなったりもするでしょう」
「……それは、作物が育たないのでは……?」
「ええ、いつものようには育たないでしょう。ですが、本来ならばそれが『自然』の在り方なのです」
ユニコーンの乙女の加護って、王国の人たちが安心安全に暮らすためのもの……だったのかな。アリコーンはパタパタと翼を動かしている。……作物が育たなければ、国民はどうなるんだろう。あちらの陛下たちは、何か対策を立てているのだろうか……。
「……ヴァプール王国が気になりますか?」
「……そう、ですね。ええと、国民が気になります」
正直、ディラン殿下はどうでも良いと思っている。王太子ではなくなるだろうから、次の王太子が国民のことを守ることを優先してくれる人であるのを願うばかりだ。
「……。お優しいですね」
「そうでしょうか……」
優しくはないような気がする。優しければ、あのまま王国に残って居ただろうし……。だけど、あれだけ大勢の前で婚約破棄を宣言されたのだ。どんな顔で社交界に顔を出せるというのか……。
≪イザベラ、悲しいの?≫
「悲しくはないよ。……何と言うか、あの王国は平和すぎてダメになってしまったのかなって、考えただけ」
お父様が言っていた公爵や侯爵のこと。国民はどうなるのだろう。不安になって来た……。
「国民のことを考えられるのですから、やはりお優しいですよ。どこぞの甥とは違います」
ランシリル様がクスクスと笑いながらそう言った。お父様のことよね。……お父様、今頃くしゃみでもしているんじゃないかしら……?
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