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11話

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 扉を開いたら、鎧を着ている男性が二人立っていて、わたくしのことを見るとすっと跪いた。……いや、もしかしたらアリコーンに跪いているのかもしれないけれど……。

「初めまして、ユニコーンの乙女。私はヒューバートと申します。ユニコーンの乙女の護衛です」
「初めまして、同じくユニコーンの乙女の護衛、ジェレミーと申します」
「ご、護衛……ですか?」

 まさかそんな人たちが居るとは知らずにお母様と話していた。お母様も、お父様も扉の前に誰かが立っていたのなら教えてくれたら良かったのに。

「初めまして、イザベラ・フランクリンと申します。よろしくお願います」

 そう自己紹介すると、二人は顔を上げた。あら、どちらも格好いい。なんて呼べば良いのか考えていると、二人のほうから名前を呼び捨てにして欲しいと言われた。そんなに顔に出ていたかしら……。

「どちらに向かわれる予定でしたか?」
「あ、えっと、……ランシリル様のところへ。アリコーンの家族について伝えたいことが……」
「かしこまりました、ついて来てください」

 そう言って二人同時に立ち上がった。……双子、なのかしら。どちらも銀髪赤目の格好良い人。ヒューバートのほうは左目の近くに黒子があって、ジェレミーのほうは唇の近くに黒子がある。
 歩き出した二人を追いかけるように、わたくしとアリコーンは歩き出した。……神殿内をついつい見てしまう。たまにすれ違う人たちは、アリコーンを見てひれ伏した。そのたびにアリコーンがびくっと身体を震わせる。

≪ねえ、ボク怖いの?≫
「怖くないよ。ただ、多分ユニコーンを信仰しているから……かな」
≪う、嬉しくない……≫

 しょんぼりしているアリコーンを慰めるように撫でると、「おおおっ」とよくわからない声が周りから上がった。……も、物凄く見られている……。

「気にしないでください。信仰の対象が目の前に現れて感激しているだけですから」
「……そ、そうなんですか……」

 ……気にするなと言われても、気になってしまうのは仕方ないよね……。

「こちらがランシリル様の執務室です」
「あ、ありがとうございます」

 ランシリル様の執務室の前にも鎧を着た男性が立っていた。男性はわたくしを見るなり跪いた。

「た、立ってください……」
「お初にお目に掛かります、ユニコーンの乙女!」
「執務室の前で大声出さない!」

 バンッと扉が開いて、ランシリル様が出てきた。わたくしが居ることに気付くと、こほんと咳払いをしてからにこりと微笑む。……さ、さっきまでの対応とはまた違うランシリル様を見て、わたしくしは目をパチパチと瞬かせた。
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