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「ようこそ、神帝国へ。お待ちしておりました、ユニコーンの乙女たちを……」

 ……眩しいくらいの笑顔を浮かべる美形な人……。神殿の神官、ランシリル様。そんなに丁寧に扱わなくても……と思ったけれど、どうやらこの国はわたくしたちを……と言うか、アリコーンを歓迎しているみたいね。

≪んー? ついたのー?≫
「ええ、ついたの。おはよう」
≪おはよう!≫

 アリコーンが嬉しそうに擦り寄って来たので、わたくしはこの子の翼を撫でた。
 ――ここは神帝国の中枢、神殿。
 魔法の力で空に浮かんでいる神殿だ。まさか、神殿がこんなところにあるとは思わなくて、馬車から降りた時びっくりした。
 さっきついたばかりなのよね。神帝国に来たと思ったら、よくわからないうちに神殿の使いの方がいらっしゃって、魔法でわたくしたちを神殿へと馬車ごと移動させてくれたのだ。
 びっくりびっくり。アリコーンは寝ていたから、そのまま寝かせていたの。アリコーンが馬車で移動するのは初めてだから、きっと乗りなれない馬車で疲れちゃったのね。

「……ユニコーンの乙女は、ユニコーンと意思疎通が出来るのですか?」
「はい。この子はまだ小さい子なので、ちょっとわがままなところもあるんですけれど……」

 ぐりぐりと甘えてくるアリコーンに、わたくしはよしよしと翼を撫でた。

「あとでブラッシングしてあげるね」
≪うん! ブラッシング好きー!≫

 キラキラと目を輝かせてそう言うアリコーンに、思わず口元が緩んでしまう。

「……これは、驚いた……。ユニコーンの乙女……」
「あ、自己紹介がまだでしたね」

 わたくしとしたことが……。ランシリル様に向かってドレスの裾を持ってお辞儀をする。

「フランクリン子爵家の一人娘……『ユニコーンの乙女』、イザベラと申します。この子は翼を持っているので、アリコーンと呼んでいます」
≪呼んだ?≫
「この度は、わたくしたちを歓迎して頂き、誠に感謝申し上げます」
≪イザベラ、呼んだ?≫
「も、もうちょっと待っていてね……」

 わたくしに懐くアリコーンの姿を見て、ランシリル様が微笑ましそうに笑みを浮かべていた。

「立ち話もなんですし、どうぞ中へ入って下さい。お疲れでしょう?」

 お父様とお母様のほうへ顔を向けると、こくりとうなずいたので神殿の中にお邪魔することした。
 中はとても明るかった。そして、何だか懐かしい感じがした。どうしてだろう? と思いきょろきょろと辺りを見渡すと、ひとつの銅像が視界に入る。
 座っている女性の膝元で気持ち良く眠っているユニコーンの銅像。女性はとても優しい顔をしながら、ユニコーンを見ている。

「初代ユニコーンの乙女を祀った銅像です。とても良い表情をしているとは思いませんか?」
「……はい、とても。ユニコーンも、女性も、お互いを信頼し合っているような……」

 そうじゃなきゃ、こんな表情は浮かんでこないだろう。
 アリコーンはその銅像を見て、≪?≫と首を傾げた。

≪あ、これおじいちゃん!≫
「おじいちゃん?」
≪ユニコーンの乙女のことが大好きだったんだよ! ボクもイザベラ大好き! 色んなことを教えてくれるもん!≫
「ふふっ、ありがとう、アリコーン。わたくしもあなたが大好きよ」

 アリコーンは嬉しそうに翼をパタパタと動かした。
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