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8話
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ヴェルナー殿下とナターリエ様とのお茶会はそんな感じでなんとか終わり、……なぜか翌日から色々な名門貴族からお茶会の招待状が届いた。私とライナルト様が婚約したからか、はたまた王城でのお茶会に招かれたからかはわからないけれど……。
……今までわたしに一ミリも興味を抱かなかった人たちが、こぞって興味を示してくる。そのことがなんだか……、あまり嬉しくない。
そりゃあ男爵令嬢の私が侯爵家に嫁ぐのだから、面白く思わない方々もいらっしゃるのだろうけど……。私がそんなことを考えていると、ライナルト様が会いに来てくださった。
「浮かない顔をしているが、なにかあったのか?」
「ライナルト様……。……そうですね、色々と。複雑な気持ちになっているというか……」
……もしかして、私のことを心配してくれているのかな? そう思うとなんだか嬉しくなった。私って単純ね!
「……今度、……両親がパーティーを開くのだが、その時に来てくれるか?」
「えっ、パーティー? わ、私が参加してもよろしいのでしょうか」
「君は俺の婚約者だろう」
ライナルト様の口から『婚約者』という言葉が出て来るのがなんだか不思議だ。未だに実感がない。今この瞬間だって夢なんじゃないかって思ってしまう。……夢じゃないのはわかっているのだけど……。
「ええと、では……、参加します……」
「ああ。そのことで、母から提案があってね。……パーティーまで一ヶ月の間があるんだが、ノイマイヤー侯爵邸で暮らしてみてはどうか、と」
「……はいっ!?」
今なんかすっごいこと言わなかった!?
「パーティーでは君のことを婚約者として紹介するつもりだ。母がそれまでに色々なことを教えてあげたい……と」
色々なことってどんなことですか!? と心の中で叫びつつ、その提案自体はとてもありがたいことだと思う。だって、侯爵家のパーティーだもの。色々な人がいらっしゃるだろう。私はライナルト様の婚約者として、恥じない行動をしなくてはならない。
「……両親に聞いてみます」
「それならもう許可を頂いた。『レオノーレをよろしくお願いします』だそうだ」
「……お父様、お母様……」
私が額に手を添えて項垂れると、ライナルト様はそっと私に手を差し出す。
「というわけで、早速だが家に行こう」
「えっ、今からですか!?」
「ああ、善は急げというからな」
……私がノイマイヤー侯爵邸に行くのが善? 不思議に思いつつも、差し出された手を握らないなんて選択肢、持っていないわ! 私が彼の手を取ると、ライナルト様はぐいっと私の手を引いて――ひょいと抱き上げた!
「ら、ライナルト様!?」
「すまない、こっちのほうが早いから」
そ、そうでしょうけども……! ライナルト様の歩くスピードって中々速いものね。……でも、私に合わせてゆっくり歩いてくれていたのよね……。そ、そんなに急いで行かないとダメだったのかしら……。……ダメだわ、ドキドキして思考が纏まらない!
馬車に乗せられ、ノイマイヤー侯爵邸へと。ノイマイヤー侯爵も侯爵夫人もすぐに出迎えてくれた。特に侯爵夫人は嬉しそうだ。
「来てくれてありがとう、レオノーレ。一ヶ月、よろしくね」
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします……!」
「ああ、そんなに緊張しないで。今日はゆっくり休んで、明日から頑張りましょうね」
「は、はい……!」
侯爵夫人の優しいお言葉に、ちょっとだけ緊張が解けたような気がした。結局その日は四人で食事を摂って、私は……なぜかライナルト様の隣の部屋に案内されて、休むことになった。
そしてそれから一ヶ月の間、侯爵夫人にビシバシと鍛えられたのだった……。
……今までわたしに一ミリも興味を抱かなかった人たちが、こぞって興味を示してくる。そのことがなんだか……、あまり嬉しくない。
そりゃあ男爵令嬢の私が侯爵家に嫁ぐのだから、面白く思わない方々もいらっしゃるのだろうけど……。私がそんなことを考えていると、ライナルト様が会いに来てくださった。
「浮かない顔をしているが、なにかあったのか?」
「ライナルト様……。……そうですね、色々と。複雑な気持ちになっているというか……」
……もしかして、私のことを心配してくれているのかな? そう思うとなんだか嬉しくなった。私って単純ね!
「……今度、……両親がパーティーを開くのだが、その時に来てくれるか?」
「えっ、パーティー? わ、私が参加してもよろしいのでしょうか」
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「……はいっ!?」
今なんかすっごいこと言わなかった!?
「パーティーでは君のことを婚約者として紹介するつもりだ。母がそれまでに色々なことを教えてあげたい……と」
色々なことってどんなことですか!? と心の中で叫びつつ、その提案自体はとてもありがたいことだと思う。だって、侯爵家のパーティーだもの。色々な人がいらっしゃるだろう。私はライナルト様の婚約者として、恥じない行動をしなくてはならない。
「……両親に聞いてみます」
「それならもう許可を頂いた。『レオノーレをよろしくお願いします』だそうだ」
「……お父様、お母様……」
私が額に手を添えて項垂れると、ライナルト様はそっと私に手を差し出す。
「というわけで、早速だが家に行こう」
「えっ、今からですか!?」
「ああ、善は急げというからな」
……私がノイマイヤー侯爵邸に行くのが善? 不思議に思いつつも、差し出された手を握らないなんて選択肢、持っていないわ! 私が彼の手を取ると、ライナルト様はぐいっと私の手を引いて――ひょいと抱き上げた!
「ら、ライナルト様!?」
「すまない、こっちのほうが早いから」
そ、そうでしょうけども……! ライナルト様の歩くスピードって中々速いものね。……でも、私に合わせてゆっくり歩いてくれていたのよね……。そ、そんなに急いで行かないとダメだったのかしら……。……ダメだわ、ドキドキして思考が纏まらない!
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「は、はい……!」
侯爵夫人の優しいお言葉に、ちょっとだけ緊張が解けたような気がした。結局その日は四人で食事を摂って、私は……なぜかライナルト様の隣の部屋に案内されて、休むことになった。
そしてそれから一ヶ月の間、侯爵夫人にビシバシと鍛えられたのだった……。
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