そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章124話(424話)

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 会場にいるアカデミー生たちの視線が、私たちに向けられているのがわかる。でも、それを気にしないで、彼の前に立つ。ヴィニー殿下は微笑みを浮かべて、小さくうなずいた。

 すっと胸元に手を当てて、頭を下げるヴィニー殿下。私はカーテシーをして応える。顔を上げると、おいで、とばかりにヴィニー殿下が軽く腕を広げた。

 私の身体はすっぽりと彼の腕の中に入るくらいだから、やっぱり踊りづらいとは思うのよ。それでも、ヴィニー殿下は私をリードしてくれるの。身長差なんて気にしていないよ、と伝えるように。

 その優しさに甘えて、ステップを踏む。ヴィニー殿下の頭に乗っている花冠を見ると、シェイドの気持ちが伝わってくるようで、とても心が穏やかになった。

 ヴィニー殿下と視線を交わすと、彼もそう思っているのか、表情が緩む。――あの場所でダンスをしたときには、世界には私たちしかいないような錯覚を覚えたけれど、アカデミーの舞踏会ではたくさんのアカデミー生が参加しているから、いろんな人たちと一緒に生きているんだな、と強く感じた。

 ちらりと周りの人たちの様子を見てみると、みんなとても楽しそうに笑っていた。この時間がもっと長く続けば良いのに、と私を含めて考えているのかもしれない。

 でも、楽しい時間はあっという間に終わりを告げる。

 ラストダンスの曲が終わり、ヴィニー殿下から離れてカーテシーをすると、彼も頭を下げた。

 ゴォーン、ゴォーン、と終わりを告げる鐘の音が聞こえる。

 舞踏会の始まりを告げた人が大きな声で、

「本日は、舞踏会に参加していただき、ありがとうございました! 各自、寮の部屋にお戻りください!」

 と、これまた短く挨拶をした。参加者である私たちは会場から出て行く。周りのみんなの表情を見てみたら、みんな充実した時間を過ごせたのだろう、とても楽しそうに笑っていた。

 ヴィニー殿下が辺りをきょろりと見渡しているのに気付いて、彼を見上げると「あ、いたいた」と呟く。

「アル!」
「ヴィー、いいところに」

 アル兄様を探していたみたい。アル兄様は、ヴィニー殿下に気付くとこっちこっちとばかりに手招く。外に出て、空を見上げる。

「ちょうどいい時間じゃない?」
「アカデミーからの許可は得ているんでしょ?」

 もちろん、とアル兄様がぐっと拳を握って力強くうなずいた。

「なにをするのですか?」
「ふっふっふ。前にクリフ様に見てもらったあの魔術さ」

 アル兄様は腰に手を添えて片手で空を指す。空になにかあるのかしら? と見上げたけれど、月と星の煌めきが見えただけだった。

 パチン、とアル兄様が指を鳴らすと、夜空に花が咲いた。一瞬のことで驚いていると、どんどんと夜空が明るい光の花で埋め尽くされた。その光の花は一瞬で消えてしまうけれど、とても綺麗で……みんな、足を止めて夜空を眺めていた。

 ヴィニー殿下もパチンと指を鳴らす。すると、今度は動物の形を模した光が夜空に輝く。

「……もしかして、ソルとルーナですか?」
「正解。身近だからつい」
「ヴィーは動物、僕は花を夜空にって話になってたんだ。こういう魔術もいいものでしょ?」
「はい、とっても綺麗です!」

 みんなもそう思っているのだろう、わぁ、という歓声が聞こえた。

「これ、魔術なの?」
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