そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章123話(123話)

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 シェイドが花冠を作り終え、ソルとルーナに渡す。それから、ヴィニー殿下にもそっと渡そうとすると、彼は目を大きく見開いて、

「僕に?」

 と、自分を指さしてたずねる。シェイドが何度もうなずくと、花冠を受け取って「ありがとう」と微笑んだ。ソルとルーナも嬉しそうに花冠を頭に乗せ、「似合う? 似合う?」と目をキラキラと輝かせながら聞いて来る。

「とても似合っているわ」
「うん、みんな可愛いね」

 シェイドも自分の花冠を乗せて嬉しそうに揺れていた。ヴィニー殿下が私へ手を差し出し、「戻ろう」と柔らかく言った。こくりとうなずくと彼の手を取り、ぎゅっと握る。精霊たちも私たちの影に入り、ヴィニー殿下が杖を取り出し、呪文を唱える。――と、一瞬で舞踏会の会場に移動した。

「……無事についたみたい」
「なんだか、夢のような時間でした」
「夢じゃないよ」

 人気ひとけのない場所だったからか、ヴィニー殿下がこつんと私の額に自分の額をくっつけて、目を閉じる。ドキリと鼓動が跳ねた。
「……そうですね」

 さっきまでの光景は夢じゃない。あの場所が人々に愛される場所になれるようにしたい。その思いも嘘じゃない。自分の胸元に手を置いて、ゆっくりと深呼吸をしてから、ぐいっと彼の首元に手を回して踵を上げて背を伸ばす。

 彼の唇に自分の唇を重ねる。すぐに唇を離すと、ヴィニー殿下は驚いたようにこちらを見た。それから、ふっと目元を細めて、ちゅっと軽い音を立てて私にキスをした。

「愛しい気持ちって、こんな風に溢れてくるものなのかもね」
「……ええ。今なら、ハッキリと自分の気持ちがわかります」

 いろいろな問題が片付いて、自分自身の感情を見つめることが出来た。失いたくない、大切な人。……それはヴィニー殿下だけではないけれど、共に未来を歩むのなら、彼が良い。

「――あなたのことを、愛しています」

 私の言葉に、ヴィニー殿下は息をんできゅっと唇を結ぶ。ほんの少しだけうつむく。それから、ぎゅっと私のことを抱きしめて、「ありがとう」と一言だけ口にした。その言葉は震えていて、なにかをこらえるようだった。

「――エリザベス嬢、僕を選んでくれて、ありがとう」

 身体を離し、泣き出しそうな笑みを浮かべるヴィニー殿下に、緩やかに首を振る。お礼を言われることではないの。

「私が望んだのです。あなたの隣にいたい、と」
「うん。それが、とても嬉しいんだ」

 本当に嬉しそうに笑うヴィニー殿下の手を、ぎゅっと握る。『リザ』ではなく『エリザベス嬢』と呼ばれると、アカデミーに入学する前のことを思い出して、懐かしくなった。

「……そろそろラストダンスの時間だね」
「最後のダンスは踊れるので、一緒に踊りましょう?」

 ぐいっと彼の手を引っ張ると、ヴィニー殿下は「そうだね、踊ろう」と歩き出した。
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