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4章
4章121話(421話)
しおりを挟むそして、ヴィニー殿下は私に手を差し出して、微笑んだ。
「踊らない?」
「――喜んで」
その手を取って、最初に踊ったダンスをすると、私たちが踊っていることに気付いた精霊たちが近くに来て、一緒に踊り出した。精霊たちの踊りはとても可愛らしくて、彼と顔を見合わせて笑みを浮かべる。
「この場所で、ヴィニー殿下と踊れるとは思いませんでした」
「そうだね。こんなに綺麗な場所になったのだし、いろんな人に見てもらいたいよね」
踊りながら会話をする。本来の動きよりも遅く動いているからか、それとも誰にも見られていないという思いからか、いつもよりも楽しく感じた。いろんな人から視線を集めてしまうことに慣れてはいたけれど、やっぱりプレッシャーを感じちゃうもの。
「きっとこの場所は、生まれ変わりますよね」
「――そうだよ。僕たちで素敵な場所にしよう?」
「私たちで……?」
ダンスが終わり、身体を離すとヴィニー殿下が花畑を見つめて私の肩に手を置いた。
「この地はリザにって話が出ているんだ」
「……どういうことですか?」
思わず目を見開き、ヴィニー殿下を見上げる。すると、彼はぽんぽんと私の肩を軽く叩いてから離れ、くるりと身体を回転させて大きく腕を広げた。
「きみがこの地に一番縁があるからね。この地をこのままにするのか、それとも人々が住めるように整えるのかはきみ次第。どちらを選んでも、僕はきみのことを支えようと思う。――きみは、この地をどういう風にしたい?」
両腕を広げたままヴィニー殿下に問われ、私はきゅっと唇を閉じて考えた。カナリーン王国は一度滅んだ。その国の土地を、私に……? と思うのと同時に、この地をもっと素敵な場所にしたいという気持ちも確かに胸にある。
「私は――……」
私が選んだ結果は、この地にとって良いことなのかどうかわからない。でも、きっと大丈夫だと感じるの。
「ヴィニー殿下と、この場所を共有したいです」
「共有?」
「はい。私の土地、ではなく、私たちの土地にしたい。あの重苦しい魔力が緩和されたとはいえ、まだこの地には魔力が残っているでしょう? だからこそ、私たちなら、その魔力を有効活用できるのではないかと考えました」
私の知識では足りない。勉強もするけれど、きっとヴィニー殿下やアル兄様のほうがこういう土地の扱い方を知っている。
「――家を建てましょう。そこを拠点にして、魔法や魔術のことを一緒に研究しませんか?」
「……僕らの家ってこと?」
こくりとうなずくと、ヴィニー殿下がもう一度「家」と呟いた。それから、嬉しさを隠すかのように顔を手のひらで覆い、ゆっくりと息を吐いた。
「――素敵な響きだね、『僕らの家』って」
「ふふ。頑丈な家を建てないといけませんよね」
魔法や魔術のことを研究するのなら、試してみることも多くなるだろう。保護魔法を掛けて頑丈な家じゃないと耐えられないかもしれないと考えると、なんだかおかしくなってきてクスクスと笑い出してしまった。
「リザ?」
「――まだまだ先のことになるんだろうけれど、楽しみで」
「うん、僕も楽しみだ」
私たちはまだ子どもで、家を建てることになるのも何年先になるのかわからない。それでも――彼とともに暮らす未来を想像して、とても楽しそうだと感じた。
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