そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章119話(419話)

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「今まで髪飾りというものは大きくて重いというイメージがありましたが、これなら小さくて軽い。それに、このくらいの小ささなら価格を抑えて平民にも買いやすいように……」

 と、ジーンがぺらぺらと饒舌に話し出した。確かに成人女性の使う髪飾りは重そうなものが多いように見える。頭の上に本を乗せて歩く練習は、ある意味その訓練になっているのかもしれない。

「平民にも? ああ、確かにアクセントとして良いかもね」
「そうでしょう! 特に年頃の女の子は『お姫様』に憧れるものです。そんなときにこのキラキラと輝くヘアアクセサリーを付ければ、お姫様気分になれるのではないでしょうかっ?」

 目をキラキラと輝かせながら熱弁するジーンに、ヴィニー殿下は「なるほどね~」と感心したように相槌を打っていた。私とディアは顔を見合わせて、小さく眉を下げ微笑み合う。

「でも、結局宝石なんでしょ? 平民が手にするには、勇気がいるんじゃない?」
「そうなんですよね……。いくら貴族が使う宝石よりも等級を落したとしても、それなりの価格にはなるので……。もう少しなんとかしたいのですけれど、思い浮かばなくて」
「ガラスじゃダメなの? ほら、色付きのガラスならキラキラして綺麗じゃない?」

 ヴィニー殿下の言葉に、ジーンは目を大きく見開いて、それから口元に指を添えて考えるように黙り込んだ。それを見ていたアル兄様が、「ガラスかぁ」と感心したように呟く。

「確かにガラスなら宝石よりも手軽に買えるかもね。でも、割れちゃうものだよ」
「保護魔法でなんとかなるでしょ。それに、宝石だって扱いを間違えれば割れるというか……粉々になったのを見たことあるし」

 ちらり、とこちらを見るヴィニー殿下に、私はさっと顔を横に向けた。覚えがありすぎるので……。魔力を込めすぎて粉々に砕けた宝石たちを思い出し、ゆっくり息を吐いた。

「……保護魔法は要らないんじゃないか?」
「え、どうしてですか、シリル様」
「壊れないって思うと、扱いが雑になると思う。せっかくの商品なんだから、大事に使ってもらいたいだろう?」
「……確かにそれも一理ありますね。なるほど。お父様と相談してみますわ。ヴィンセント殿下、シリル様、貴重なご意見感謝します」

 カーテシーをすると、ジーンはにっこりと微笑みを浮かべた。それに対して、「いえいえ」とばかりに手を振るふたり。

「そういえば、舞踏会ってまだ終わるまで時間あるよね」
「今夜は遅くまでやるからね」
「そっか。なら、リザ。……ちょっと抜け出さない?」

 悪戯っぽく笑うヴィニー殿下に、私も含めたみんながキョトンとした表情を浮かべた。
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