そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章117話(417話)

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「結婚が待っているものね」
「イヴォンには幸せになってもらいたいわ。もちろん、ハリスンさんにも」

 幸せそうに微笑み合いながら踊るふたりの姿を見て、私とジーンが言葉を交わす。すると、背後からぽんと肩を叩かれた。驚いて振り返ると、シー兄様が「楽しんでるか?」とたずねてきた。隣には、ディアもいる。

「うん。シー兄様こそ、よく参加者側になれたね?」
「オレ、アカデミー飛び級したから、こういうイベント参加してなかったんだよね。先生がそれを覚えていてくれてさ。恋人との思い出になるだろうって、参加を許してくれたんだ」

 シー兄様からさらっと『恋人』の言葉が出ると、なぜかドキッとしてしまう。今まで女性に対しての話題がなかったから? ちらりとディアを見ると、顔を真っ赤にさせて固まっていた。

「良かったわね、ディア」

 ふふ、と楽しそうにディアの腕をツンツンと突くジーンに、「もうっ」と言いながらも嬉しそうなディア。

「ちゃんと軽食も食べるんだぞ。水分補給も」
「シリル兄様は僕らの保護者かな?」
「成人しているのオレだけなんだから、保護者だろ?」

 アル兄様が呆れたような視線を送るも、シー兄様はキョトンとした表情を浮かべて首を傾げる。きっぱりと保護者だと言い切るシー兄様に、アル兄様は驚いたように目を丸くした。

「成人って関係ある?」
「……え、アル、もしかしてオレの保護者になりたかったのか?」
「いや、そうは言ってない! だって、シリル兄様、どちらかと言えば僕らをまもるよりは力を借りるほうでしょ?」

 シー兄様はアル兄様の言葉を聞いて、「ああ」と納得したようにうなずいて片手を腰に添えた。

「そりゃあ、オレひとりで出来ることなんて限られているからな。それに――……」

 じっとアル兄様を見て、片手でポンっとアル兄様の肩を叩く。

 アル兄様は怪訝そうにシー兄様を見上げていた。そういえば、アル兄様とシー兄様の身長差もそれなりにあるのよね。お父様が一番高いから、シー兄様はお父様の血をより濃く受け継いだのかもしれない。

「自分だって、まもる側だと思っていただろう?」
「それは……、そうかもしれないけれど。……でも、なんか意外。シリル兄様が自分の限界を知っているなんて」
「お前の目にはオレはどう見えていたんだか」

 アル兄様から手を離して肩をすくめるシー兄様に、アル兄様は軽く自分の頬を指先で掻いた。

「仕方ないよ、アルにとってシリル兄様はヒーローだったんだから」

 飲み物を手にしていたヴィニー殿下が会話に加わった。

「ヴィー!」

 慌てたようなアル兄様の声に、シー兄様はクスリと笑う。そして、もう一度、今度はちょっと痛そうな音を立てながらアル兄様の肩を叩いた。
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