そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章115話(415話)

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 ジェリーは私たちへの挨拶を終えると、すぐに別の友人のところへ向かった。ジェリーの友人は私たちに小さく頭を下げると、彼女と一緒に飲食用のテーブルに近付いて行く。

「なにか飲み物持ってこようか?」
「いえ、大丈夫です。それよりも、まだみんなのダンスを眺めていたいです」
「ああ、みんなダンス得意ですごいよね」

 同意するように首肯するヴィニー殿下に、私はみんなが踊っている姿を見ながら「本当に」と言葉をこぼす。身長差もあるから踊りにくかっただろうなぁ、とちらりとヴィニー殿下を見上げると、私の視線に気付いて微笑んだ。

「どうかした?」
「……身長が高くなる方法って、どんなものがありますかね?」
「え? うーん……たくさん食べてたくさん寝る? ところで、どうしてそんなことを気にしているの?」
「私の身長が高ければ、ヴィニー殿下、もっと踊りやすいのではないかと思って……」

 ぼそぼそと言葉を紡ぐ私に、ヴィニー殿下はぽんっと頭に手を乗せて「気にしなくて良いのに」と優しい声色で呟いた。でも、気になるものは気になるのですよ、ヴィニー殿下。

「まあ、確かに僕もそこそこ高くなったと思うけど、低いほうだよ?」
「そうでしょうか……?」
「うん。だってほら、アンダーソン家に囲まれている僕を思い出してみて? 低いでしょ?」

 そう言われて、お父様やシー兄様、アル兄様と並んでいる姿を想像してみると……確かに言われてみればヴィニー殿下が一番低い。とはいえ、アル兄様とは数センチの差しかないと思うのだけど。

「でも、私とはかなりの差ですよ」
「可愛くていいじゃない。もちろん、高くなっても可愛いと思うけど」

 真顔で言われて目を大きく見開いてしまった。ヴィニー殿下の中では、『可愛い』部類に入るのかと思うと、顔に熱が集まっていくような気がする。そんな私に、ヴィニー殿下は「本当だよ?」とさらに言葉を続けた。

「……なーに人の妹口説いてんの」
「アル、とジーン嬢」
「ふたりとも並んでいるとすごくわかりやすいので、来ちゃいました」

 じとりとした目でヴィニー殿下を見るアル兄様に、その様子をおかしそうに眺めているジーンが声を掛けてきた。曲が終わってから、飲み物を飲んでいたらしい。

「わかりやすい?」
「ええ、ヴィンセント殿下とリザが並んでいると、そこがぱっときらめているように見えるのよね。華やか、が合っているかしら?」
「は、華やか?」
「今日は特に着飾っているしね」

 ジーンが顎元に人差し指を添えながら考えるように目を閉じ、しみじみと自身の感想を口にする。私とヴィニー殿下は互いに顔を見合わせて、首を傾げた。確かに気合を入れてドレスを準備したけれど、そこまで華やかな感じではない……と思う。

「ふたりが信頼し合っているんだなって、なんだかわかるんだよね。ちょっと悔しい。リザ、あとで僕とも踊ろうね」
「え、あ、はい。もちろんです、アル兄様」
「それはどちらにジェラシーを感じているのですか、アルフレッド様?」
「さあ、どっちだと思う?」

 ジーンの問いに肩をすくめるアル兄様。そんな様子のふたりを、ヴィニー殿下がただ静かに笑みを浮かべながら見守っていた。
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