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4章
4章109話(409話)
しおりを挟むそれから、ジーンはサクサクとイヴォンとディア、さらにジェリーに試して欲しい髪飾りを選び、ぽんと渡した。
「舞踏会はすぐだから、持っていて?」
「失くしたら悪いわ」
「大丈夫よ。――舞踏会、今日だから」
えっ、とディアと私の声が重なった。そのことにイヴォンが目を丸くする。
「知らなかったの?」
こくりとうなずくと、イヴォンとジーンは顔を見合わせた。そして首を傾げる。むしろどうしてイヴォンたちは今日が舞踏会だと知っていたのかしら? あ、でも舞踏会用のドレスを持っていくように何度もお母様に言われたわ。ということは、知らなかったのは私たちだけ?
「どうして黙っていたのかしら……?」
「さあ……?」
夜会をイメージしているから、夜に始まるだろうということしかわからない。いつの間にそんな準備をしていたのかしら……?
「私たちは夜会の参加者だから、準備は別の人たちがやってくれていたわよ。参加者と準備する人でわかれているの」
「で、参加者はパートナーと一緒に会場に入るの。準備をする人たちは雰囲気を掴むためにしているみたいよ」
ジーンとイヴォンの説明を聞いて、納得できたようなできないような、複雑な心境になった。確か、ヴィニー殿下は参加者側ではなくウエイターとして飲み物を配ったりしていた……と聞いている。
「今年はヴィニー殿下が最初から『参加者』として舞踏会にパートナーを連れてくるって噂が流れていたのよね」
早口でまくし立てるようにジーンが目をキラキラと輝かせながら、両手を組んでいる。イヴォンがどこか呆れたような視線をジーンに向け、こほんと咳払いをすると私をじっと見つめた。
「『アンダーソン家の養女と仲が良い』って噂もあったから、リザが入学する年は参加者側になるんじゃないかって」
「開催側は先生たちが選んだらしいわ。あと、立候補で」
「……全然知らなかった。いつの間に?」
「入学してからすぐに。マザー・シャドウのことでリザたちはそれどころじゃなかっただろうから、言わなかったのよ」
ジーンが眉を下げて微笑んだ。……確かに、マザー・シャドウのことで頭がいっぱいだったから、聞いたところで生返事になっていたかもしれない。私の友人は私のことをよくわかっている。
「まあ、楽しみましょう。綺麗に着飾ってダンスするの」
「……そうね、楽しみましょう」
マザー・シャドウのことも、カナリーン王国のことも、すべて片が付いたと言ってもいいだろう。私が使える浄化の火だって、ヴィニー殿下たちのおかげでコントールできるようになった。
「――胸のつかえが取れて、晴れ晴れとした気持ちで参加できそう」
私がこぼした言葉に、ディアとジーンがそれぞれ優しく肩を叩き、イヴォンが笑顔で「たくさん楽しみましょうね」と明るく言ってくれた。
「ええ!」
元気よく返事をすると、みんな笑顔になってくれた。
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