そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章108話(408話)

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「これはフルオライトの紫色。透き通るような感じが綺麗でしょう?」

 ジーンがドレスの隣にフルオライトの髪飾りを置く。確かにまるで水晶のように透き通っている。

「これに、赤を組み合わせて……」

 ジーンが別の髪飾りも取り出す。今度は赤色。スピネル、かしら? 濃いけれど、小さいのでそこまで目立たない。

「こんな感じの髪飾りはどうかしら?」

 そう言って私を振り返るジーンに、私はじっとジーンが選んだ髪飾りと、自分のドレスを見つめてうなずいた。

「とても素敵だと思う。でも、この髪飾り、本当に私が使って良いの?」
「もちろんよ! リザが使ってくれるなら宣伝効果もバッチリだもの」

 にこにこと笑うジーンに、ディアとイヴォンが思わずと言うように噴き出した。私もくすくすと笑ってしまう。だって、ジーンったら宣伝のことしか頭にないようだったから!

「入学パーティーのときにつけていたかんざし、好評でね。リザとイヴォンのおかげで売り上げが良かったのよ。今回もあやかろうと思って」

 えへ、とウインクするジーンに、私たちは顔を見合わせた。今回はディアと恐らくジェリーも彼女の宣伝に付き合うことになるだろう。

「ジーンだって自分でつけていたじゃない」
「三人でお揃いだったっていうインパクトが欲しかったのよ。リザは注目を浴びるしね」
「複雑な気持ちだわ……」

 私が注目を浴びるのは、ただ単にアンダーソン家の養女であるからで、私自身が目立つことをしているわけじゃない。それをジーンたちはわかってくれている。

「今回はリザが『ヴィンセント殿下の婚約者』としての初舞台になるから、さらに注目度アップよ」

 私の肩に手を置いたジーンは、とても楽しそうに笑っている。……どうやら、それを見越したうえでの髪飾りらしい。

「本当はアクセサリーも身に着けて欲しいところだったけど、リザは自分のアクセサリーがあるものね」
「……ええ、まぁ、そうね」

 ヴィニー殿下とアル兄様からいただいたものが。ダイヤモンドの指輪に、アメジストとプラチナのネックレス。……どちらもアミュレット。

「そういえば、ジーンに協力してもらったって言っていたわね」
「ネックレスのこと? まあね。アルフレッド様とは商売のことでいろいろと相談に乗ってもらっていたの」

 商売のことで? と首を傾げる私たちに、ジーンは「アルフレッド様の巫子の力をちょっとね」頬を掻く。アル兄様の巫子の力って、商売のこともわかるの……? と驚いて目を丸くした。

「アルフレッド様の勘で始めた事業が思いのほかうまくいってね、いや、もしかしたらえていたのかも……?」
「アル兄様、ジーンの事業を手伝っているの?」
「アドバイスをいただいているわ。それがとても参考になるからありがたくもあり、ちょっと悔しさもあり……」

 頬に手を添えてしみじみと呟くジーン。アル兄様、いつの間にジーンと連絡を取り合っていたのだろうと男子寮にいるであろう兄を思い、ゆっくりと肩をすくめた。
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