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4章
4章102話(402話)
しおりを挟む「ヴィニー殿下、本当にありがとうございます」
杖を握りしめて頭を下げると、彼は私の肩に手を置く。顔を上げると、緩やかに首を左右に振った。
「僕がやりたかったんだ。杖って重要だからね」
「……お身体も大事ですわ」
「あはは、ごめん、反省してるよ」
明るく笑うヴィニー殿下に、それ以上なにも言えなくなってしまった。私の肩から手を離し、ふわぁと眠そうに欠伸をするのを見て、眉を下げる。
「ヴィニー殿下、休んでください。眠いのでしょう?」
「……うん、じゃあ、そうさせてもらおうかな……。クリフ様、リザのことをお願いします」
「わかっておるわ」
どこか呆れを含んだような視線を彼に向けるクリフ様。
「リザ、先に部屋から出てくれるかの?」
「はい。では、ヴィニー殿下、ゆっくり休んでくださいね!」
返事の代わりにひらひらと手を振るヴィニー殿下に、小さく肩をすくめて部屋から出て行く。パタンと扉を閉めて、数分後にクリフ様が出てきた。
「ヴィニー殿下は?」
「着替えてベッドに潜ったらストンと寝たぞ」
「……やっぱりお疲れだったのですね」
手紙をもらってすぐに来ちゃったけれど、返事を出して後日にしたほうが休めたかしら? と考えながらもクリフ様と一緒に歩く。ピタリ、とクリフ様が足を止めた。
「クリフ様?」
「……リザ、ちょっと付き合ってくれんかのぅ?」
「それは構いませんけれど……」
付き合うって、どこへ? とクリフ様を見つめると、私の手を取って歩き始めた。廊下の隅で足を止め、杖で床をトントントン、と三回叩くと、魔法陣が浮かび上がり淡い光を放つ。
――一瞬で、別の場所に移動した。
「ここは……?」
「魔法の訓練所、じゃな。リザ、攻撃魔法をあの壁に向けて放ちなさい」
「攻撃魔法……」
攻撃魔法、と聞いて思い浮かんだのは火の球だった。イメージして、クリフ様の言う通りに壁に向かって放つ。自分が想定した火の球と同じ大きさだったことに、感動した。これも杖のサポートのおかげなのかしら?
「……ふむ」
「クリフ様?」
「もう少し大きく出来るかの?」
「やってみます」
火の球をもう一回り大きくして、壁に向かって放つ。火の球は壁に当たり消えていく。……壁が無傷なのがすごいと思う。焦げたりもせず、綺麗なままだ。
「では、次は弾ける火の球を想像してごらん」
「弾ける、ですか?」
「そうじゃ。壁に当たる前に四方に飛び散ると想像するんじゃ」
「は、はい……!」
弾ける火の球……壁に当たる前に……と想像しながら火の球を放つ。想像通りに壁に当たる直前に弾けた。クリフ様はそれを見て、パチパチパチ、と拍手をする。
「クリフ様?」
「素晴らしい腕前じゃ。リザはイメージ通りに魔法を使うのが得意なのじゃな」
「そう、なのでしょうか……?」
クリフ様はこくりとうなずいた。
「コントロールを覚えるのも早かったからのぅ。わしの孫たちは優秀な子たちが多いの」
その言葉があまりにも嬉しそうで、私は目を大きく見開いてそれから「ふふ」と笑ってしまった。ひいおじいさまに魔法のことを褒められるのはとても嬉しい。
「ありがとうございます、ひいおじいさま」
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