そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章100話(400話)

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 ヴィニー殿下は眠そうに目元を擦って、それから私たちの存在に気付くと「えっ?」と小さく呟き、跳ね起きた。

「リザ!?」
「起こしてしまいましたか?」
「……いや、ごめん、来てくれたんだ」
「わしもいるぞ、ヴィンセント」
「リザが来たら起こしてくださいってお願いしたのに……」

 恨めしそうにクリフ様を見るヴィニー殿下。その表情は年相応に見えて思わず「ふふっ」と笑い声がこぼれた。すると、彼らは顔を見合わせ、それから「リザはちょっと部屋から出てもらえるかな? 着替えるから」と言われたので、小さくうなずき部屋から出た。

 ヴィニー殿下が着替え終わるまで待っていると、

「もういいよ」

 と、扉が開いた。

 部屋の中に入り、椅子に座るようにうながされてすとんと座る。ふと、ヴィニー殿下の視線が下に移動し、私の指にめられた指輪に気付くと、嬉しそうに目元を細めた。

「待たせてごめん。これが、きみの杖だよ」

 そう言ってヴィニー殿下は杖を取り出した。月と星の飾りを付けた杖。

「持ってみてもらえる?」
「はい」

 杖を受け取り、ぎゅっと握る。杖が、ほんのりと温かくなった気がした。驚いてヴィニー殿下を見ると、彼は杖と私を交互に見て、それからクリフ様に顔を向ける。

「良い感じに馴染んでますよね?」
「うむ。この短期間でよぅここまで完成させた」

 感心したような、呆れたような表情を浮かべてクリフ様がうなずく。ヴィニー殿下は「でしょう!」と胸を張ったけれど、クリフ様にじとりと睨まれて、顔を背けた。

「リザ、あの力を使えるかどうか、試してみぃ」
「わかりました」

 椅子から立ち上がり、浄化の火を試してみる。

 ゆっくりと深呼吸をひとつ。――杖を握りしめ、杖の先を見つめてそこに浄化の火を出すようにイメージしてみた。大きくもなく、小さくもないあおい火が現れた。

「コントロールはどう?」
「試してみます」

 大きくしたり、小さくしたり。あの日のように蒼い火をどのくらいコントロールできるのか試してみると、私の意志を反映するように言うことを聞いてくれた。

「……大丈夫のようです」
「そうだね。うん、良い感じ」
「そうさの。魔力の感じはどうじゃ?」
「……自分の思う通りにできますね。以前、試したときよりも通りが良い感じがします」

 そう伝えると、ヴィニー殿下がぱぁっと表情を明るくさせた。

「そうだろうね! その月と星の飾りにもアミュレットを埋め込んでいるから、きみの魔力の高さを補助してくれるはずだよ!」
「この飾りに、アミュレットが……?」

 ちらりと飾りに視線を向けて、しゃらりと鳴る月と星をよく見てみる。

 確かに、宝石が散りばめられていた。最初に見たときには気付かなかったけれど、小さな粒がたくさんあった。
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