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4章
4章99話(399話)
しおりを挟む魔塔について、馬車から降りる。扉を開けてくれたカインの手を取って。カインたちは近くで待機するので、魔塔に入るのは私だけだ。
魔塔の扉を開くと、すぐにクリフ様が顔を見せてくれた。
「リザ、よぅ来たのぅ」
「ごきげんよう、クリフ様。杖が完成したという手紙を受け取ったので、参りました」
「うむ、こっちじゃ」
カーテシーをしてからクリフ様に用件を伝えると、すぐに納得したような表情を浮かべて私をヴィニー殿下のところへ案内してくれた。ヴィニー殿下の部屋に入ると、すやすやと眠っている姿が見えた。ちゃんとベッドで休んでいるみたいで、そこに安堵の息を吐くとクリフ様が「寝てるのぅ」と呆れたように肩をすくめる。
「……起こすか」
「いえ、ヴィニー殿下が起きるまで待ちます」
だって、きっと疲れているだろうから。私の杖を作ることに夢中になって心身ともに疲れているだろうと考えてクリフ様に伝えると、クリフ様は「リザは優しい子じゃな」と頭を撫でてくれた。
「では、その気持ちを汲んで少し寝させてやるか」
「ふふ、はい」
クリフ様はベッドのそばに椅子を移動させて、そこに座るように促した。椅子に座り、ヴィニー殿下を眺める。目を閉じているから、幼く見える彼をじっくりと。……うん、この前お会いしたときよりも、隈は薄くなっているように見える。
「リザに礼を言わなければと思っていたのじゃ」
「礼、ですか?」
クリフ様が近付いて、私の肩に手を置き、小さく首を縦に動かした。そして、視線をヴィニー殿下へと移動させ、ヴィニー殿下が寝ずに杖の制作をしていたことを話してくれた。……やっぱり、のめり込んでしまったのね、と心の中で呟いて、クリフ様を見上げた。
「わしらが止めても聞かんヤツでな。まったく、誰に似たのじゃろう。じゃが、リザに途中経過を報告しに行ったあとから、きちんと睡眠をとるようになった。リザが言ってくれたのじゃろう?」
お茶会の日に会ったことを思い出し、こくりとうなずく。だって、あまりにも……徹夜しました、とわかる顔をしていたから……。
「ヴィニー殿下、きちんと守ってくださったのですね……」
「婚約者に心配をかけるな、とわしも言ったからの」
くつくつと喉を震わせて笑うクリフ様に、目を丸くしてしまった。
「するとの、ヴィンセントは『……ですよね』と反省したように肩を落としておったぞ」
その姿を想像して、そしてアル兄様も同じように肩を落としていたことを思い出して、「ふふっ」と笑い声をあげてしまった。
その声に反応したのか、ヴィニー殿下の瞼が震え、ゆっくりと目を開けた。
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