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4章
4章98話(398話)
しおりを挟むお茶会が終わって数日が経ち、ヴィニー殿下から杖が完成したという手紙が届いた。私は早速お母様に伝えて、魔塔に行くことを告げると、お母様と一緒に居たアル兄様が「僕も行く!」と元気よく手を上げた。でも、お母様から肩を掴まれて、笑顔で「ダメよ」と却下されていた。
「どうしてもダメ?」
と小首を傾げて聞いていたけれど、お母様は笑顔を崩さずにうなずいた。見るからにしゅんとしたアル兄様に、なんて声を掛けたら……と考えていると、お母様が声を掛ける。
「馬車を用意させるから、カインと一緒に行きなさいね」
「ありがとうございます、お母様。行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい。魔塔の方々によろしくね」
「あ、リザ! 帰って来たら、これだけは教えてくれる?」
アル兄様が私に近付いて耳元で囁いた。……ヴィニー殿下の安否確認をお願いされた……。アル兄様も、ヴィニー殿下が徹夜で杖を作っていたことを知っているのね……いいえ、もしかしたら、アル兄様もヴィニー殿下と一緒に徹夜で作っていたのかも……?
「……大丈夫だとは思うけれど」
「僕もそうだと思うけど、魔術バカのヴィーだからね。油断は出来ないのさ」
腕を組んでしみじみと呟くアル兄様に、くすくすと笑うと、お母様がアル兄様の肩に手を置いて、笑みを深めた。
「アルフレッド、魔術バカなのはあなたもでしょう? わたくし、気付いていてよ。あなたの部屋の灯りが、夜明けまでついていることを」
ギクッと身体を強張らせるアル兄様に、私はやっぱり笑ってしまって、それを見たふたりも一緒に笑った。
そんな和やかなお母様の執務室から出て、カインを呼ぶ。カインはいつも近くに居てくれるみたいで、呼べばすぐに来てくれる。
「魔塔に行くから、護衛をお願い」
「かしこまりました」
お母様が馬車を用意してくれるみたいだから、私は一度部屋に戻って外出用のドレスに着替えてから指にヴィニー殿下からもらった指輪を嵌めた。
玄関前に馬車が用意されていることに、素早い、と少し驚きつつも、馬車に乗る。カインは馬に乗っていくようだ。
御者に「魔塔まで」とカインが伝えると、馬車が動き出した。魔塔までの風景を眺めながら、どんな杖になったのだろう? と想像を膨らませた。
それにしても……、杖ってそんなに簡単に作れるもの……ではないわよね? それを一週間もしないうちに完成させるなんて、ヴィニー殿下、一体どれだけの睡眠時間を削ったのかしら……と不安を感じてしまう。
お茶会の日に現れた以上の隈だったらどうしよう……。杖の完成を急いでくれたのは嬉しいけれど、やっぱり自分のことを大切にして欲しい。
そう考えながら、窓から流れる風景を眺めていた。
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