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4章
4章97話(397話)
しおりを挟む「ちなみに、リザはいつ、ヴィンセント殿下のことを好きになったって自覚したの?」
興味深そうに聞かれて、私は少し考えてからにっこりと笑みを浮かべる。キョトンとした顔をするみんなに向かって、口元で人差し指を立て、
「秘密」
と言うと、みんな目を丸くして、それからふっと表情を和らげた。
「秘密なら仕方ないわねぇ、残念だけど」
「ええ、残念だけど」
残念、を強調されている気がする。恐らく、気のせいではないだろう。でもね、自覚したのはつい最近なのよ。だから、この想いに『恋』という形がついたのも最近だと感じる。
もちろん、それ前からヴィニー殿下のことは好きだったけれど。その『好き』は家族と同じような『好き』だったと思う。
……ただ、よくよく考えてみると、昔から少し違う『好き』だったのかもしれないと、今は感じるの。
「とりあえず、リザ姉様たちが幸せなら、私は満足です!」
ジェリーの言葉に、私は彼女をじっと見つめる。異母妹は本当に私のことを慕ってくれていると思う。それがなんだかくすぐったい。
「ありがとう、ジェリー。ジェリーの幸せを願っているわ」
「お礼を言われることでは……。だって、リザ姉様、これまで大変だったでしょう? 大変だった分、これからはたくさんの幸福に包まれて欲しいの」
照れたように笑うジェリーを見て、胸の中がぽかぽかと温かくなった。ジェリーがそう思ってくれているのが嬉しい。ディアが私とジェリーを交互に見て、それから目元を細めて口角を上げた。
「みんなが幸せに暮らせるのが、一番よね」
そう口にすると、ディアは椅子から立ち上がり、ジェリーに近付いて肩に手を置いた。イヴォンも同じように彼女の肩に手を置く。
「……そうね、それが一番ね」
ジーンがしみじみと言葉を出すと、みんなうなずいた。
そして、気が付けばお茶会を始めてからかなりの時間が経っていた。そのことに気付き、みんな名残惜しそうに帰る準備をする。
「今日はとても楽しかったわ。また会いましょう」
「ええ、またたくさん話しましょう」
私とディアはみんなを見送り、みんなはアンダーソン家の馬車で帰っていった。――お茶会はこうして、いろんな話をして終わった。
馬車が見えなくなるくらい見送ってから、私とディアは視線を交わしてハイタッチをする。みんなに楽しんでもらえたと思ったから。
「お茶会の準備、楽しかったわね」
「ええ、みんなと話せたのも楽しかったわ」
「――だからかな、今、ちょっと寂しい」
「……わたくしも同じ気持ちよ」
楽しい時間というのはあっという間に終わるものなのね、と改めて思う。だからこそ、一瞬一瞬を大切にしないといけないわね、と考えた。
「また、みんなとたくさん話したいわ」
「ええ。アカデミーが始まる前に、またみんなで集まりましょう」
そんなことを話しながら、私たちはリタとタバサが片付けているであろう中庭に向かった。もちろん、片付けを手伝うために。
私たちが準備したのだから、私たちも片付けたかったのだ。
リタとタバサは「お嬢様たちにそんな……」と言っていたけれど、私たちがしたいことなの、と押し切った。
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