そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章93話(393話)

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「彼女は彼女なりのけじめをつけたかったのね、きっと」

 ぽつりとイヴォンが口にする。私たちは「そうね」とうなずいた。ジュリーのことを思い、空を見上げる。もしも、なんて考えてしまい、ゆっくりと首を左右に振った。

「リザ?」
「なんでもないわ。ねえ、ジーンはなにをして過ごしていたの?」
「私? 私はね――……」

 そこからは、ジーンの話に移った。レイチェル様と企画を考えていたみたいで、詳しいことはまだ言えないけれど、と楽しそうに笑っていた。ジーンは相変わらずしっかりしているなぁと思いながら、お茶会を楽しんでいると、タバサとリタがなにかに気付いたように顔をそちらに向ける。

「――ヴィンセント殿下」
「お茶会の邪魔だったかな?」

 ヴィニー殿下が目の下に隈をくっきりとつけて軽く手を振った。

 驚いたように声を上げたのはディアだった。私はヴィニー殿下の元に駆け寄り、「どうしたのですか、隈が……!」と声を掛ける。彼は自分の目元を擦り、小さく笑った。

「杖をね、作っていたんだよ」
「まさか、徹夜で……?」
「それで、ちょっと使ってみて欲しくて。……って思ったけど、お茶会中だったんだね、邪魔してごめん」

 ちらりと、ジーンたちを見ると、彼女たちは『こちらは気にしないで』と言うようにひらひら手を振っていた。私は小さくうなずいて、ヴィニー殿下に「大丈夫ですよ」と声を掛ける。すると、彼はぱぁっと明るい表情を浮かべて、

「じゃあ早速。これなんだけど」

 と、杖を取り出した。シンプルな杖だ。

「試してみてから飾り付けをしようと思ってね」
「では、お借りします」

 ヴィニー殿下から杖を受け取り、浄化の火を試してみる。杖の先から蒼い火が上がる。この前のようにはならず、きちんと自分でコントロール出来ている気がする。

「リザ、そのまま火を大きくしたり小さくしたり、出来る?」
「試してみます」

 言われた通りに火を大きくしたり、小さくしたりと繰り返すと彼は満足そうに首を縦に振る。

「うん、大丈夫そうだ。それじゃあ、僕はこれに飾り付けをしに行くね」
「……あの、ヴィニー殿下。少し休憩されたほうが良いのではありませんか……?」
「え? 元気だよ?」
「そう見えないから、言っているのです」

 ヴィニー殿下はきょとんとした表情を浮かべて、「そうかなぁ?」と後頭部に手を置いた。ひいおじいさまが杖を作るのを禁止した理由がよく理解出来た。このままじゃ、身体が壊れちゃうだろう。

「少々お待ちください」

 私はジーンたちの元に戻り、理由を説明してお茶会の席から離れることを伝えると、ジーンたちはこころよく送り出してくれた。

「ありがとう、このお詫びはいずれ必ず」
「そんなに気にしなくて良いわよ。それよりも、ヴィンセント殿下によろしくね」

 ジーンがそう言うと、みんながうなずいた。もう一度、「ありがとう」と伝えてからヴィニー殿下の元に行き、彼の手を取って屋敷に入る。とにかくヴィニー殿下を寝かせないと、と思いながら自室に向かう。

「元気なんだけどなぁ……」
「そんなにくっきり隈をつけているのに? 寝不足でしょう?」
「久しぶりに作る杖が楽しくてね……」

 ベッドに彼を押し込んで、私はベッドの近くに椅子を持って来て座ろうとした。すると、ヴィニー殿下がくいっと私の手を引っ張る。

「ヴィニー殿下?」
「……あのさ、お願いしたいことがあるんだけど……」

 その『お願い』を聞いて、私は顔を真っ赤にさせた。

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