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4章
4章92話(492話)
しおりを挟む「私たちは『ジュリー』のことはよく知らないのよね。一番知っているのはエリザベスでしょうけど」
ちらり、とこちらを見るジーンに、小さく首を縦に動かす。私とジュリーは双子として十三年、ファロン家で共に過ごしていたから。そのうちの十年間はマザー・シャドウの魔力で満ちていたから、ジェリー本来の性格だったかどうかは、今ではわからない。
カナリーン王国の近くの村で再会したときには、毒気が抜けていたように見えたし、自分がしたことに後悔しているようだった。
「はい。なので、リザ姉様に会わなくて良いのかと聞いたの」
「そしたら?」
「――『お姉様はきっと、私のことを許してしまうから会わないほうが良いと思ったの』……と」
私が、許してしまうから? と首を傾げる。あのとき、すべてを許せるわけではないと伝えていたけれど……。ジェリーは眉を下げて言葉を紡ぐ。
「――『お姉様は、『妹』に優しいから』と続けていましたわ」
「……ジュリー……」
ぽつりと彼女の名を口にする。幼い頃にはたくさん呼んだ名前。彼女は自分の罪を認め、王都から去った。そっと目を伏せて、ゆっくりと息を吐く。
「ジェリーは、ジュリーと話してどう思ったの?」
イヴォンが私からジェリーに視線を移して尋ねる。
ジェリーは少し考えるように黙り込み、それから口を開いた。
「……彼女がなぜ私に会いに来たのかわからなかったけれど、今思えばリザ姉様に会えない代わりに来たんじゃないかな、って。私とリザ姉様の仲が良いことに気付いているみたいでしたし……」
だからこそ、こうして彼女の言葉を伝えられたのだし、とジェリーが肩をすくめる。カップを持ち上げて、こくこくとお茶を飲んだ。
「彼女が背負った罪は、重いものですよね」
ディアが頬に手を添えて、悲しそうな声色で呟く。ジーンとイヴォンが「そうね」と同時にうなずいた。
「……たぶん、ジュリーはマザー・シャドウの魔力に一番影響を受けていたと思うの」
彼女が一番、マザー・シャドウと過ごす時間が多かったはずだ。彼女は私のガヴァネスとしてファロン家に来たけれど、私と接するときは授業のときだけで、他はジュリーの近くに居た気がする。
ファロン夫妻の話し合い――という名の激しい口論を、恐らくジュリーはそれを何度も見てきたのだろう。そのたびに、彼女がジュリーを慰めていたと考えれば、なぜジュリーがあんなに私を目の敵にしていたのかわかるような気がした。
……憶測にすぎないのだけど、ね。
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