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4章
4章90話(390話)
しおりを挟むそこからは、質問攻めにあった。どういう流れで婚約を結んだのか、アンダーソン家と国王陛下たちはどんな言葉を掛けたのかと、答えられる範囲で答えたけれど、ぐいぐいと質問をされて、答えられなかったものもあると思う。
「ディアっ、ディアも報告することがあるでしょう?」
助けを求めるようにディアに話題を振ると、みんな目をギラリと輝かせてディアに顔を向ける。ディアはびくっと肩を跳ね上げ、「あ、えっと……」と恥ずかしそうに頬を朱に染め、
「し、シリル様とお付き合いすることに、なりました……」
と小声で言った。もちろん、それにもみんな同時に「お付き合い!?」と反応を示し、私からディアへと質問攻めの相手が変わった。
ジーンたちが「あのシリル様と!?」ときゃあきゃあ騒いでいた。シー兄様、結婚していてもおかしくない年齢なのだけど、『家継がないし』という理由でお見合いとか求婚書をのらりくらりと躱していたのよね。
そして、アル兄様も『巫子の力でわかると思うから、お見合いパス』ときっぱり断っていた。巫子の力で運命の相手もわかるものなのかしら? と思考をしていると、ディアの顔が段々赤くなっていく。最終的に「も、もういいでしょう……?」と涙目で言われて、追及は終わったようだ。
「イヴォンも結婚しちゃうし、婚約者がいないのって私とジェリーだけになっちゃったわねぇ」
「ジーン様はすぐに見つかると思いますよ!」
「ありがとう。ジェリーだってすぐに見つかると思うわ」
「……そもそも私、結婚願望ないんですよね……」
困ったように眉を下げるジェリー。意外に思えて目を丸くする私たち。
「結婚願望がないって、珍しいわね?」
「あ、結婚はそのうちすると思う。恋愛結婚ではないと思うけど……」
ジェリーにはブライト商会を背負う未来が待っているから、結婚相手にどういう人が良いとかあるのかしら?
そして、恋愛結婚と聞いて全員がイヴォンに視線を向ける。イヴォンが「な、なに?」と引きつった笑みを浮かべた。
「ハリスンさんとは、結婚の話は進んでいるの?」
ジーンが首を傾げて尋ねると、イヴォンは顔を赤くさせながらもこくりとうなずいた。
「ハリスンのご両親がね、認めてくださったの」
胸元に手を置いて目を閉じるイヴォン。その声は歓喜に震えていて、私たちはイヴォンの喜びを感じ取り、笑みを浮かべた。
「そっか、良かった……」
「本当に。建国祭のときに陛下にお願いして良かった……」
建国祭のことを思い出して、ほぅ、と息を吐くディア。
「そうね、そのおかげかも。あなたたちのような友人を誇りに思いなさいって言われたわ」
くすり、と微笑みを見せるイヴォンに、私のような? と首を傾げた。イヴォンは私たちを見渡して大きく首を縦に動かす。
「ええ。私のために願いことを使ってくれる人たちを、大切にねって」
そう言ったイヴォンの表情はとても優しかった。
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