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4章

4章82話(382話)

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「みんなに出会えていなかったら、きっと私はあの場所から動けなかったから。みんなと出会えて、嬉しいの」

 出会いとは本当に不思議なことなのだと感じた。どんな巡り合わせなのかわからないのが、出会いなのかもしれない。

「公爵家のアル兄様が子爵家のファロン家に来たことも、マザー・シャドウがファロン家に来たことも、すべて繋がっていくのかなって」

 建国祭に入る前のマザー・シャドウとのことを思い出して、眉を下げる。彼女の望みは叶うことがなかったけれど、もしかしたら……再会を果たしているのかもしれない。そうであって欲しいと、願う。

「エリザベスは、マザー・シャドウのことを許したの?」
「……わからないわ。そもそも、彼女のことも、よく知らないのだから」

 覚えているのは、恐怖心だけだった。彼女そのもののことを、私は知らないし、知ろうとも思わなかった。ただただ、恐怖心を植え付けられていたように思う。そして、ジュリーのことをねたましく思うように誘導されていたとも思う。

 家族の仲を崩壊させて、自分がファロン家を乗っ取ろうとしたのかもしれない。ううん、もっと言えば、ジェリーが身体を奪われそうになったように、私の身体を奪うつもりだったのかもしれない。

 あの浄化の火に包まれて消えてしまったから、もう確認する手段はないのだけど……。

「でもね、ひとつだけ、感謝していることがあるの」
「マザー・シャドウに?」
「ええ。――私を産んでくれたことに、感謝しているわ」

 だって、生まれて来なかったら、こんなに幸せを感じることは出来なかっただろうから。それだけは、本当に感謝している。

 血は繋がらなくても、私のことを愛してくれるアンダーソン家の家族たち。みんなのことを思うと、心が温かくなる。

 支えてくれる家族や友人。そして――婚約者の顔を思い浮かべると、全身に幸せが満ちていく気がした。

「――?」

 ふと、お腹に違和感を覚えた。なんだかどんどんと痛くなってきて、お腹に手を置いてうずくまってしまった。

 お茶を持ってきたリタが、うずくまっている私を見つけて「お嬢様!」と駆け寄ってくる。

「どうしたのですか? 大丈夫ですか?」
「リタ……なんだか、お腹が、痛いの……」

 それだけをなんとか伝えた。リタはすぐに私をベッドまで運んでくれて、「すぐに戻りますから」と言って部屋から出て行った。

 リタはマリアお母様とカーラ様を連れて戻ってきて、カーラ様が来ていたことにびっくりしていると、「大丈夫かい?」と近付いてきた。

 そして、リタとお母様を部屋から出て行くように促(うなが)すと、カーラ様は診察をしてくれた。そして――……

「おめでとう。身体が大人になったんだよ」

 と、微笑んだ。

「大人になった……?」

 目をまたたかせて聞き返すと、カーラ様は優しくうなずいた。

「女性の身体の仕組みを、知っているだろう?」

 こくりとうなずく。――大人になった、とは……そういうことなのね。そっとお腹を撫でると、カーラ様が手を伸ばす。

「心境の変化でもあったかな? はじめのうちは大変だろうけど、これは慣れるしかないからね」
「――はい……。聞いてはいましたけれど、自分の身がそうなると、なんだか不思議ですね……」
「まぁねぇ。とりあえず、ゆっくり休んでいるんだよ」

 目を隠すように手が触れる。瞼を閉じて、「はい」と返事をした。

 心境の変化には、心当たりがある。

 ――目指す淑女レディに、なれるかな……?
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