そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章78話(378話)

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「……とりあえず、ソルとルーナ、元の大きさに戻ってもらっていい?」

 ヴィニー殿下が大きくなったソルとルーナに顔を向けて、眉を下げる。ヴィニー殿下の部屋は広いけれど、大きくなったソルとルーナが一緒だと、なかなかの圧迫感だ。精霊たちもそれを思ったのだろう、ポンっと音を立てて元の大きさに戻った。

「なかなか迫力があるのぅ……」
「元はこんなに愛らしいのにね」

 じっとソルとルーナを見つめるクリフ様とヴィニー殿下。照れたように笑う精霊たちを見て、私はそっと手を伸ばしてソルとルーナを抱っこした。

「月の女神の杖を返したからかな? コントロールが効かなくなったのは。ソル、ルーナ、なにかわかる?」
「……エリザベスの力は」
「月の女神より強い、かも?」

 こてんと首を傾げるルーナ。私たちは顔を見合わせて、「ん?」と変な声を出してしまった。だって、月の女神の力の大半を私が受け継いだようだけど、それだと月の女神の力よりは弱いはずだもの。

 でも今、ソルとルーナは私の力のほうが強いと口にした。

「月の女神の属性は『月』のみ」
「エリザベスは『太陽』の属性も持っているから」
「……そういえば、そうだった」

 普段あまり気にすることがなかったから、頭から抜けていた。ヴィニー殿下とクリフ様がぎょっとしたように目を丸くしていたのは、恐らく自分の属性を気にしていなかったことに気付いたからだろう。

「でも、それだとどうして月の女神は太陽と月をモチーフにした杖を持っていたの? 月のモチーフだけで良くない?」
「あの杖は、月の女神が女神になるときに太陽の神にもらったもの」
「月と太陽は離れられないって」
「そうだったんだ……」

 ソルとルーナは月の女神からそういう話を聞いていたのかな? ソルとルーナが生まれる前の話だから。ヴィニー殿下が顎に手を掛けて悩むように眉間に皺を刻んでいた。

 それを見ていたクリフ様が、ヴィニー殿下の肩をぽんぽんと叩く。

「クリフ様?」
「リザの魔力のコントロールの良さは、お前もよく知っているじゃろう。それならば、どうすればより良くなるかを考えてみぃ」

 クリフ様に魔力のコントロールが良いと褒められると、なんだか嬉しくて頬が緩んでしまった。その頬を引き締めるようにきゅっと唇を結ぶと、ソルとルーナが不思議そうに私を見ていた。

「――新しい杖を作る?」
「うむ。杖は役に立つぞ。では、その杖はどうやって作る?」
「確か、魔塔に加工されていない木材がありましたね」
「うむうむ」

 ヴィニー殿下が答えにたどり着くように導くクリフ様。

「そっか、僕が作れば良いんだ」
「え?」
「リザ、木材を選ぼう! そして杖を作ろう!」
「え? え? あの?」

 目をキラキラと輝かせながら、ヴィニー殿下は両手を広げた。とても楽しそうなヴィニー殿下に困惑していると、クリフ様が杖で彼の脇腹を突いた。

「なにするんですか」
「魔術バカ、暴走するな。ちゃんと説明をしないと、リザが困惑するだけじゃろう」
「……あ。すみません、リザ」
「い、いえ……」

 しゅんとしてしまったヴィニー殿下に、私は慌てたように首を振る。ホッとしたように笑うヴィニー殿下を見て、どきりとした。

「僕らのように魔力が高いと、コントロールが結構難しいんです。僕はこれがあるから大丈夫だけど」

 自分のローブに手を入れてすっと細身の杖を取り出す。シンプルな杖だ。
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