そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章66話(366話)

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 こんな風にみんな一緒で朝食を摂ることって、あとどのくらい出来るのかしら? ずっと一緒に居たいと思っていたけれど、時間が流れる限りそれは出来ないことなのだと気付いた。

 だからこそ、一緒にいる時間を大事にしたい。

「美味しい? エリザベスちゃん」
「はい、とても美味しいです」

 アカデミーに通うようになって、料理をする楽しさも教えてもらった。そして、アンダーソン邸とアカデミーの料理人シェフたちの努力を知った。

 貴族だからなのか、私たちが教えてもらう料理はとても簡単なもの。それでも手間取るの。体験したことがないから。

「――どうやったら、こんなに美味しく作れるのでしょう?」
「それはもちろん、修行したからだろうねぇ」

 ソフィアさんがスープを一口飲んで、私を見て微笑んだ。

「修行……」
「どんなことでも、極めるためにはがんばらないといけないのよ」
「そうだな、剣の道も魔法の道も、みんな一筋縄ではいかないだろう」

 お父様がうんうんとうなずいている。

「それぞれ適性というものもあるからね。でも、好きなことをやるっていうのが、一番だと思うわぁ」

 ……私の好きなこと。ソフィアさんはゆっくりと目元を細める。そして羨ましがるように頬に手を添えて声を弾ませた。

「エリザベスちゃんたちはどんな大人になるんだろうねぇ。わたしはもう大人になっちゃったから、みーんなが大人になるのを楽しみにするしかないのよねぇ」

 そう言って、私とヴィニー殿下、アル兄様とエド、それからディアに視線を巡らせて、パチンとウインクをひとつ。

「オレは?」
「あなたはもう成人しているでしょう」

 呆れたような顔をするソフィアさんに、シー兄様は肩をすくめた。

「ソフィアさんの言う大人って、成人のことだったのか」
「ちょっと、何歳くらいのことだと思っていたの?」
「え、……ひいじいくらい……?」
「それはもう大人じゃなくてお年寄りでしょうに!」

 ひー、お腹痛い、と笑い出したソフィアさんに、シー兄様は首を傾げていた。自分の発言がツボに入ったのが、意外だったみたい。

「いやソフィアさんの年齢を考えれば……」
「やーねー、女性はいつでも年頃なんですー!」

 目尻に涙を浮かべながら笑っているソフィアさん。そして、シー兄様の発言を咎めるようにマリアお母様がシー兄様の名前を呼んだ。シー兄様は頬を掻いて黙り込む。

 笑いのツボに入ってしまったソフィアさんの笑い声を聞きながら、朝食を食べ終えた。笑いながらも食事を摂るソフィアさんを見て、器用だなぁなんて思ってしまった。

「はー、朝から笑った、笑った。シリルちゃん、突然面白いこと言うんだもの。さてと、それじゃあ、エリザベスちゃん、ヴィンセントちゃん、時間をちょうだいねぇ」

 彼女の言葉に、私たちは小さくうなずいて、三人で話せる場所へと移動した。
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