そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章63話(363話)

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「……リザ、アンダーソン邸まで送るよ」
「……はい、お願いします」

 ヴィニー殿下は私に近付いて、肩に手を置いた。ハッとしたように顔を上げて、彼へと視線を向けると、小さく微笑んでいる姿が見える。

「それじゃあ、アンダーソン邸まで帰ろうねぇ。ヴィンセントちゃんは魔塔?」
「はい。ソフィアさんは?」
「アンダーソン邸にお泊りしようかな? 許してもらえると思う?」
「大丈夫だと思います」
「そうだね、ソフィアさんと一緒のほうが良いかもしれない。叔母様に説明もお願いできますか?」
「わかってるわ。ちゃーんと報告するから、安心なさいな」

 ぽん、と優しくヴィニー殿下の頭を撫でるソフィアさんに、ヴィニー殿下はホッとしたように息を吐いた。

「それじゃ、今度は魔法で帰ろうか」

 きょろりと辺りを見渡すと、馬車の姿はなかった。

「ああ、馬車は帰ってもらったよ。どのくらいの時間が掛かるかもわからなかったし、帰りは魔法でも良いかなぁって思っていたしねぇ」

 ソフィアさんがにこにこと笑いながらそう言った。……確かに、あの時間から深夜まで待つなんて、大変なことだろう。

「ヴィンセントちゃん、お願いできる?」
「はい。それじゃあ、近くに寄ってくれますか?」

 ヴィニー殿下の言葉に、ソフィアさんが近付いた。

 そして、私と精霊たち、そしてソフィアさんへ視線を巡らせて魔法を発動させた。

 淡い光に包まれて、あっという間にアンダーソン邸につく。玄関のようだ。

「リザ、ヴィー!」

 深夜だというのにアル兄様が駆けつけてくれた。

「アル、えたの?」
「ううん、魔力の反応を感じただけ。――無事に会えたようだね、良かった」

 アル兄様はソルとルーナに視線を向け、最後にヴィニー殿下の足元に視線を移してから顔を上げて微笑んだ。

「ソフィアさん、ふたりを精霊界に連れて行っていただき、ありがとうございます」
「気にしなくて良いのよぉ。頼れる人がいるなら頼る。それが生きていくうちの大切なことよぉ」
「生きていくうちの……?」
「だって、人はひとりじゃ生きていけないじゃない?」

 ソフィアさんは、そう言うとにこっと微笑んでみせた。アル兄様は軽く肩をすくめて「確かにそうですね」と答えてから、自分の手のひらを見つめている。

「とりあえず、今日はもう遅いから早く休みなよ。ソフィアさんとヴィーは泊っていく?」
「わたしは泊らせてもらうねぇ」
「僕は……」
「ヴィーは僕の部屋でも良い?」
「いや、魔塔に……」
「いいじゃん、たまには。ヴィーと話したいこともたくさんあるんだ」

 アル兄様の言葉に、ヴィニー殿下は渋々うなずいた。

「それじゃあリザ、ソフィアさん、精霊たち、おやすみ」
「おやすみなさい、アル兄様、ヴィニー殿下」

 小さく頭を下げてから、自室に向かう。なんだか、ふたりの会話の邪魔をしちゃいけない気がした。
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