そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章58話(358話)

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 そんな会話をしながら、馬車で移動すること数時間。ソフィアさんが向かった先は、花畑だった。色とりどりの花が咲いているのを見て、思わず窓から外の景色をじっと眺めていると、馬車が動きを止める。

「それじゃあ、今日はここから行こうか」
「はい」
「わかりました」

 馬車から降りて、花畑を見渡す。こんなに綺麗に咲き誇っているのに、私たち以外の人がいない。

「それじゃ、わたしの手を握ってくれる? 前と同じように、目を閉じていてねぇ」

 私とヴィニー殿下がそれぞれソフィアさんの手を握り、目を閉じる。ソフィアさんが歩き出し、精霊界へと向かった。

 どのくらい歩いていたのか、わからない。

「――もう大丈夫」

 すっと目を開けると、そこは二年前と変わらない不思議な世界が広がっていた。

「相変わらず不思議な場所だよね」
「ええ……。……ヴィニー殿下、精霊界の記憶があるのですか?」
「こんな不思議な場所、忘れられないって」

 ヴィニー殿下が肩をすくめる。……確かに、この場所は一度訪れたら忘れられない気がする。

「……でも、なんだか……前と、少し空気が違うような……?」
「あら、さすがエリザベスちゃん。よく気が付いたわねぇ」

 私の言葉にソフィアさんがパチパチと拍手を送る。ヴィニー殿下が「空気?」と首を傾げると、ソフィアさんが眉を下げた。

「人間界と精霊界って、微妙に繋がっているの。だから、人間界の出来事が精霊界に影響を与えることもあるし、逆もまたしかり」
「精霊界って独立した世界じゃなかったのか……」
「精霊が人間に協力するのは、世界のバランスをたもつためよぉ?」

 口元に指を掛けて独り言を口にするヴィニー殿下。それを聞き、ソフィアさんがピッと人差し指を立ててそれを左右に振りながら精霊界を見渡す。

 太陽と月が同時に出ていて、片方は明るく片方は暗い世界。以前と同じような方法で精霊を呼び出せるのなら……と水辺に向かおうとしたら、ソフィアさんが声を掛けてきた。

「わたしは別の場所を探してみるから、エリザベスちゃんとヴィニーちゃんはここら辺を探していてね」
「あ、はい。ソフィアさん、協力していだたき、本当にありがとうございます!」

 ソフィアさんは軽く手を振って別の場所へ向かう。精霊界については、きっとソフィアさんが一番詳しいのだろう。私が来たことあるのはこの場所だけだから、他の場所を探すことは出来ない。

「とりあえず、名前を呼んでみようか」
「そうですね」

 ソルとルーナ、そしてシェイドの名前を口にする。でも、しんとして、なんの反応もなかった。――それでも、何度でも名前を呼ぶ。水辺に近付き、以前と同じようにその境目に手を入れようとすると、どこからか声が聞こえて来た。風の音に乗って聞こえて来た声は、私だけではなくヴィニー殿下にも聞こえたようで……。
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