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4章
4章55話(355話)
しおりを挟む「……たまに、夢を見るのです」
「夢?」
突然そんなことを言い出した私に、ヴィニー殿下は先を促すように視線で問う。
「月の女神として、カナリーン王国を見守っている夢です。そのときの女神は、とても幸せに満ちていて……、愛していた国が、滅んだのはきっと私たちの想像以上につらかったことだと思います」
そう、私は月の女神の生まれ変わりだからなのか、彼女の夢をよく見るようになった。同じく、魂をわけたジェリーとジュリーも、夢を見るのかしら?
「……そうだね、想像できないくらいの、衝撃だったろうね」
ヴィニー殿下は目元を細めてうなずいた。視線は、窓に向かっている。
「僕だって、この国が滅んだと想像するだけで怖いよ。大切なものが一瞬で消えてしまうなんて……」
「カナリーン王国の最期の王は、どうして滅ぶことを選んだのでしょう?」
「滅んじゃっているから、本当に推測でしかないけれど……。魔力が強すぎた、のかもしれないね」
ヴィニー殿下の言葉に首を傾げる。魔力が強すぎた?
「きみの瞳……、後天性ではあるんだろうけれど、それは純粋な魔力の高さを表している『宝石眼』だ。リザがその瞳になったのも、月の女神の生まれ変わりである示唆だったのかもしれないね」
そっと目元に触れる。鏡で見るたびに、不思議な気持ちになる瞳。
銀色の髪に黄金の瞳……。後天性とはいえ、この瞳に多くの魔力が宿ったのは……月の女神の意志だったのかもしれない。
「……どうして、魂をわけたときに均等にしなかったのでしょうね」
均等にわけられたのならば、私たち三人とも同じくらいの魔力の量を宿せただろう。
「月の女神は、リザが大変な目に遭うことを知っていたのかもしれないね。顔に火傷を負って、目に魔法を掛けられて、頼れるはずの家族から虐げられることを」
淡々とした口調で語られる私の過去に、眉を下げる。
もしかしたら、ジェリーやジュリーが私のようになっていた可能性もあるのよね。そう考えてゾッとした。火傷を負うことも、世界が白黒に見えることも、家族につらく当たられることも、経験して欲しくはない。
「とはいえ、無理矢理背負わされた業だ。これからは、自分が幸せになることを真剣に考えなくちゃ」
にこっと笑うヴィニー殿下に、私は小さく微笑みを返す。
「そうですよね。私……絶対、幸せになれるって確信を持っているんです」
「そうなの?」
「はい。だって、私が愛する人たちがいるんですもの」
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「……そうだね。やっぱりきみは、眩しいなぁ」
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「だね。ん~……、じゃあ、ソフィアさんから了承を得たら、すぐに行けるように準備だけはしておこうか」
「はい!」
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――それから二日後、ソフィアさんが精霊界に行くために来てくれた。
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