そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章50話(350話)

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 国王陛下と王妃殿下との謁見を終え、ほっと一息を吐いたあと、ヴィニー殿下に「少し、時間をいただけませんか?」とたずねた。彼は「いいよ」と微笑んだ。

城内こっちの部屋、使ってないから、魔塔まで行こう」

 と、言うことで、魔塔のヴィニー殿下の部屋に向かうことに。ほとんど魔塔で過ごしているからか、城内の自室は殺風景なのだと笑って話してくれた。

 魔塔まで歩き、ヴィニー殿下の部屋に移動すると、

「紅茶しかないけど良い?」
「あ、お気遣いなく……」

 ヴィニー殿下の部屋は、以前彼に秘薬を飲ませるために入ったときよりも散らかっていた。いろいろな本と紙があちらこちらに置いてあり、ヴィニー殿下が熱中していたことを物語っている。

「散らかっていてごめんね。魔力を回復させるために、魔力を使うなって言われていて、代わりに魔導書を読むのに夢中になっちゃって」

 少し恥ずかしそうに眉を下げて笑うヴィニー殿下に、私は目を数回またたかせて、それからくすりと笑ってしまった。

「お元気そうでなによりです」
「うん、もう魔力は完璧に回復したと思う。……リザは? 大丈夫?」
「はい、私も平気です。……あの、お伝えしたいことがあるのです」

 こぽこぽとお茶をカップに淹れて、はい、と渡された。カップを受け取り「ありがとうございます」と微笑むと、「どういたしまして」と目元を細めるヴィニー殿下。

「それで、伝えたいことって?」
「精霊たちのことなのですが……」

 夢で見たことを話すと、ヴィニー殿下は黙り込んでしまった。そして、お茶を一口飲むと、自身を落ち着かせるように視線を落とす。

「――精霊界で、か……。それじゃあ、ソフィアさんに頼まないとね」
「はい。出来るだけ早く、迎えに行きたいと考えています」
「そうだね、アカデミーが始まる前に迎えに行かないと。護衛が居ない状況になっちゃうし」

 ヴィニー殿下の護衛はシェイドだったから、今の彼には護衛が居ない状況だ。

「……あの、護衛が居ない状況で大丈夫なのですか?」

 私にはカインという護衛が居るけれど、ヴィニー殿下には……。そう考えて辺りを見渡す。カインは一応ついて来てくれているけれど、片時も離れないというわけではないし、私が席を外して欲しいとお願いすれば扉の前で待ってくれている。

 今日だってそうだ。ヴィニー殿下とふたりきりで話したいとお願いしたから、この部屋には私とヴィニー殿下のふたりだけ。カインは扉の前で待っている。

「影が居るから別に平気。まぁ、迷惑を掛けるつもりはないけど」
「影……」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。シェイドは物心がついた頃から一緒に居るから、傍に居ないのは変な感じがするけど……、自分の身を守れるくらいには、強いから」
「……ですが、やはり心配です」
「ありがとう。優しいね、リザ」

 手を伸ばして、私の頭を撫でる。なんだかくすぐったい気持ちになった。

「……普段、影はどこに居るのでしょうか?」
「城内でのんびり暮らしているよ。ほら、城って広いでしょ? 影が住む場所があるんだよ」
「そうだったんですね……」

 決まった場所にしか行かないから知らなかった。

「王位継承権を辞退したから、僕の影は解消されるかもしれないけど」
「そうなのですか?」
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