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4章
4章48話(348話)
しおりを挟む後日、王城に呼び出された。謁見の間に通され、国王陛下と王妃殿下の前に跪く。ヴィニー殿下も一緒に。隣に彼がいてくれるだけで、とても心強い。
謁見の間にいるのは、私たち四人の他にこの城を……いえ、国王陛下たちを護る騎士たちだけ。
「立ちなさい。そして、顔を上げなさい」
国王陛下の厳かな声が広がる。私とヴィニー殿下は立ち上がり、顔を上げる。王妃殿下は慈愛の瞳を向け、国王陛下はなにかを探るように私たちを見ていた。
「発言を許す」
とだけ口にすると、黙り込んでしまった。困惑した私の前に、ヴィニー殿下が前に出た。
「あの光の柱のことですが……」
そこから、ヴィニー殿下が光の柱のことを詳細に語り出し、聞き終える頃には国王陛下は深く重いため息を吐いた。
「あれがそんなにも恐ろしいものだったとは……。それでは、カナリーン王国の人々は解放されたのだな?」
「はい、エリザベス嬢の力で。……あの力、今も使える?」
「試してみます」
すっと手のひらを上にして、浄化の火を出せるか試す。ぽう、と淡く蒼い火が出てきたことを確認し、国王陛下と王妃殿下はじっとその火を見つめた。
「では、彼女は本当に……」
「はい。彼女が月の女神の生まれ変わりであることは間違いないでしょう。この浄化の力を使えるものは、エリザベス嬢以外に存在しないと思います」
淡々とした口調でヴィニー殿下が言葉を紡ぐ。私はただ、それを聞いているだけだった。
「エリザベス嬢。レディはその力を、どう使うつもりか?」
問いかけられた言葉に、じっと国王陛下を見つめる。そして、視線を浄化の火に移し、火を消すとぎゅっと拳を握った。
「――この力は、月の女神からの授かりもの。苦しんでいる人々のために使いたいと考えております」
握った拳を胸元に置き、真っ直ぐに国王陛下に視線を向ける。国王陛下は、小さく口角を上げるとうなずいた。
「そうか。あなたならきっと、力を驕ることなく使えるだろう」
「ええ、そうですわね。……ふたりとも、体調はもう平気なのですか?」
王妃殿下に問われて、私とヴィニー殿下は同時に「はい」と答えた。その答えに、おふたりとも安堵したように微笑みを浮かべたのを見て、国王陛下と王妃殿下にも心配を掛けてしまっていたのね、と改めて思った。
「レディの異母妹であるジュリー・ファロンのことは、聞いているかな?」
「はい、陛下。ジュリーから手紙が届きました」
手紙の内容を思い出して、ほんの少しだけ目を伏せた。
「そうか。ジュリー・ファロンは名を改め、長い髪をばっさりと切り修道院へ向かった。ファロンの姓を持つ者はもういない。そこで問う。レディはファロン家をどうしたい?」
「……ファロン家は、二年前のあの日に崩壊しました。今の私はエリザベス・アンダーソン。たとえ血の繋がりがなくとも、アンダーソン公爵家の長女であることは変わりません。――ファロン家は没落しました。それでよいと、思います」
国王陛下と王妃殿下に対し、真っ直ぐな言葉を紡いでいく。ふたりとも、小さくうなずいたのが見える。
私とジュリーは、きっともう、会うことはないだろう。
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