そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章42話(342話)

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 カップを持ち、一口お茶を飲む。温かいお茶が身体をじんわりと温めてくれる。ほう、と同時に息を吐いて、ディアと視線を交わして笑い合った。

「そういえば、さっきシー兄様と中庭に居たよね。どうだった?」
「……どう、って?」

 頬をぱっと赤らめるディアに首を傾げながら、「中庭の花々を見に来たんじゃなかったの?」とたずねると、ディアは慌てたように何度もうなずいた。うなずくたびにディアのストロベリーブロンドが揺れる。

「そ、そうなの。じっと屋敷の内で大人しくしているのも飽きるだろ、ってシリル様が誘ってくださったの」
「そうだったの……。シー兄様、ディアのことを気遣ってくださったのね」
「そうみたい。お優しい方よね」

 その厚意……いいえ、好意、かも? に、ディアは少し戸惑っているように見えた。カップを置いて、人差し指に髪を巻き付かせる。落ち着きなさそうなディアの様子に、私はもう一度お茶を飲んで、テーブルの上に手を置いてぐっと身を乗り出す。

「ねえ、ディア。シー兄様のことを、どう思う?」
「えっ?」

 私が直接的に問うと、ディアはわかりやすく頬を赤くした。たまに、イヴォンも同じような反応を示すことがある。ハリスンさんとのことを聞いたときだ。

「……そ、そうね。とても格好良い人だと思うわ。そして、とても優しい方……。わたくしにも気遣ってくださって……」
「待って、ディア。なんか、じゃないわ。ディアはすごい人よ!」
「リザ?」
「留学して母国から離れて暮らしているし、古代語だって読めるし、あの『呪いの書』に書かれていたことも理解出来ていたし、苦手なことだって真剣に向き合っているじゃない! 顔だって美人だし、身長だって高くてすらりとしていて、とっても魅力的よ!」

 ディアの良いところをあげていく。ディアは私が口を開くたびに、「え」とか「あの」とか戸惑ったように声を上げ、私が言い切ると両手を顔に覆い、耳まで真っ赤にしたディアが「も、もういいから……」と小さな声で呟いた。

「……えっと、だからね、ディアはとても素敵な人なのだから、『なんか』なんて言わないで。私はディアのこと、とっても好きなんだから!」

 ぐっと拳を握って力説すると、ディアは顔を覆っていた両手を離し、ちらりと私を見た。

「……あ、ありがとう、リザ……」

 真っ赤になったディアが、少しだけ潤んだ瞳で私を見た。その姿もとても魅力的だと思う。

「……そうね、わたくしを大切に思ってくださる方々がいるのだから、卑下ひげしちゃダメよね」

 ぺちん、と両手で頬を軽く叩き、ディアは吹っ切れたような表情を浮かべる。――その表情はとても、爽やかな笑顔だった。
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