そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章34話(334話)

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 ジェリーの手紙の返事を書く。心配してくれてありがとうという気持ちを込めて、丁寧に。『呪いの書』に関しては、あの本が一体どういう役割を持っていたのか結局は推察しか出来なったけれど……、もう二度と見ることがないと思えばなんだかホッとした。それはきっと、ジェリーも同じ気持ちだろう。灰になってしまったのならば、誰の手にも渡ることはない。

 近いうちに会えたら嬉しいと言葉を添えて、書き終えた手紙を封筒に入れて赤い蝋を溶かしてぽたりと落とし、そこにシーリングスタンプを押す。

 アンダーソン家の養女になった数日後に、マリアお母様が渡してくれた、『エリザベス・アンダーソン』のシーリングスタンプ。個人的な手紙に使ってねと微笑んでいたお母様の顔を思い出して、じっとスタンプを見つめる。

「お嬢様、お茶をどうぞ」
「ありがとう」

 タバサが戻ってきていたみたい。手紙を書くことに集中していて、気付かなかった。

 声を掛けられたことで意識がタバサに向かい、差し出されたお茶を一口飲んだ。小さくほう、と息を吐くと、タバサが心配そうにこちらを見ていたから、首を傾げる。

「タバサ?」
「あ、いえ……。なんだか、お嬢様の顔が……とても綺麗に見えて」

 目をぱちくりと瞬かせてしまった。カップを置いて、そっと頬に手を添えてみる。

「そう?」
「はい。なんというか、雰囲気が違うように見えて」
「……雰囲気……」

 今までの私がどんな風に見えていたのか、少し気になったけれど……それを聞くのは少し勇気がいるような気がして、言葉を切る。

「光の柱が無事に消えたから、安心したのかも」

 ……と、言うことにしておこう。

 ……でも、ひとつだけ……。精霊たちはまったく姿を見せないのが気になった。私の魔力がまだ回復していないから? それとも、なにか理由があるのかしら……?

 ソルとルーナに会いたい。……どうやって探せば良いのかわからない。ソフィアさんに聞けば、もしかしたら……? 今度、ヴィニー殿下に話してみよう……と考えて、そっと唇に指先を触れさせた。

「あら、お嬢様。顔が赤いですよ。熱ですか?」

 不安げにリタが私の額に触れた。私は両手を振って、「違うわ」と慌てて言ったけれど、強制的にベッドに押し込まれた。

「まだ体調も完璧に戻ったとは言えないのですから」

 リタが心配そうに眉を下げて私を見る。声もほんの少し震えているような気がした。……ずっと心配してくれていたのだろう。タバサも。

 私は眉を下げて微笑みを浮かべ、ふたりに向けて「心配してくれてありがとう」と口にすると、ふたりは首を横に振った。
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