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4章
4章21話(321話)
しおりを挟む驚いたように、私を見上げるジュリー。ハンカチを取り出して、彼女の涙を優しく拭うと、びっくりしたように身体を硬直させた。
「……私の力……?」
驚き過ぎたのだろう、涙が止まったようだった。私は大きく首を縦に振り、ジュリーに向けて真剣な表情をみせた。
「そうよ、ジュリー。あなたの魔力が必要なの」
力強くそう言うと、ジュリーは戸惑ったようだった。それでも、意を決したように真っ直ぐに私を見て、「わかりました」と協力を約束してくれた。私がほっと安堵の息を吐くと、ジェリーがパンっと両手を叩いた。
「それでは、リザ姉様、明日どんなことをするのかを教えてください」
「――ええ、あのね――」
私はハンカチをジュリーに渡すと、席に戻り座った。それから三人の顔を見て、明日のことを話し出す。……月の女神の願いを叶えるために、私たちがやらなければないことを――……。
☆☆☆
そして翌日。早朝に集まった私たち。村人たちは「危険ですよ!」と引き止めてくれたけれど、私たちはお礼を言ってからその場をあとにした。
ブランドン様とアミーリア様の馬車に、ジェリーとジュリーを乗せてもらった。
光りの柱に近付くたびに、ドクンドクンと心臓がイヤな音を立てる。
カナリーン王国に捕らえられた人々の嘆きや、悲しみが流れ込んでいるのかもしれない。ぎゅっと自分を抱きしめるように二の腕を掴む。心を落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。
「……緊張している?」
ヴィニー殿下にそう問われ、私は正直に「はい」と答えた。
「実は、僕も緊張してる」
と、微笑むヴィニー殿下に、私はつられるように微笑んだ。ヴィニー殿下は目を伏せて、言葉を続けた。
「アカデミーは長期休暇に入ったけど、明けてから最初のイベントは舞踏会なんだ。入学パーティーでした『約束』、覚えてる?」
パートナーになって欲しいと言われたことを思い出し、小さくうなずいた。ヴィニー殿下は「よかった」と口にした。そして、真っ直ぐに私を見て、優しく目元を細める。
「一緒に踊るためにも、無事に帰らなきゃね」
「……そうですね」
アカデミーで学びたいことはたくさんあるから、月の女神の願いを叶えて、ヴィニー殿下たちとまた、一緒にアカデミーに通いたい。みんなと笑い合いながら、再会したい。
そんな会話をしているうちに、近付けるギリギリまで辿り着いた。
馬車を降りて光の柱をよく見てみたら、苦悶している人々の顔が浮かび上がっていた。どこからか、「ひっ」と短い悲鳴が聞こえた。
私は光の柱をじっと見つめ、そしてそっと目を伏せた。
心の中で女神に語り掛ける。――カナリーン王国の人々を救いたいの。力を貸して、と。
パッと、杖が現れた。その杖は光の柱の進行を食い止めたときと同じ――太陽と月を模様したものだった。
その杖を掴み、真っ直ぐに前を見つめる。
「――月の女神よ、その力を私に貸して――……!」
私の声に応えるように、周囲に銀色の光が集った。
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