そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章20話(320話)

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 場所を移動して、私、ジェリー、ディア、ジュリーでお茶を飲むことになった。お茶とお茶菓子はアミーリア様が用意してくれた。旅行中に手に入れたのよ、とにこやかに教えてくださり、てっきり一緒にお茶を飲むのかと思ったら、「私はブランドンとシリルの様子を見て来るわね」と席を外した。

 沈黙が流れた。その沈黙を破ったのはディアだった。

「……ええと、初めまして。わたくしはクラウディア。ディアと呼んでくださるかしら?」

 ディアは自分の胸元に手を置いて自己紹介をした。ジュリーはディアを見て、それから
「ジュリー・ファロンです」と頭を下げた。

 ……ジュリーのこんな態度を見るのは初めてで、不思議な気持ちになった。

「……ああ、もうファロン家はないんでしたっけ……」

 悲しそうに俯くジュリーに、私たちは黙り込んでしまった。再びの沈黙が流れ、今度は私がジュリーに声を掛けた。

「あの女性ひとから受けた魔力の影響は、もう抜けたの?」

 その問いに対し、ジュリーは「はい」と小さく返事をした。

「そう。……今のあなたは、あの頃のことをどう思っているのか、聞いても良いかしら?」

 ジュリーはゆっくりと顔を上げて、私と視線を合わせた。そして、ぽつぽつと当時のことを話し出した。

「……あの頃、ずっとお姉様が羨ましかった。お母様もお父様も、お姉様のことを『良い子』として可愛がっているのを見て、悔しかった。ガヴァネスが来て、ペンダントをもらってから、『羨ましい』、『お姉様よりも愛されたい』、『優位になりたい』という気持ちが溢れて……お姉様のことをいじめたの」

 ジュリーはところどころ言葉を詰まらせながら、言葉を紡ぐ。話しているうちにどんどんと下を向いてしまった。

「でも、あの日……アンダーソン家の人たちと一緒に現れたお姉様を見て、崩れていくファロン家を見て、私の信じていた『幸せ』はこんなにもあっさりと壊れるものなんだって思ったわ。……塔に閉じ込められてから、段々と私がお父様を殺したという事実が怖くなって……」

 膝の上に置いた手をぎゅっと握り、身体を震えさせたジュリーは、ますます俯いてしまう。

「ごめんなさい、ごめんなさい、お姉様……」

 声と身体を震わせながら謝罪を口にするジュリー。私は椅子から立ち上がり、彼女に近付いた。大粒の涙が流れているのを見て、なぜか胸が締め付けられるように痛くなった。

「……あなたのしたことを、全部許せるわけではないけれど、私に対して『申し訳ない』という気持ちがあるのなら、あなたの力を貸して欲しいの」

 そっと、ジュリーの肩に手を置く。ジュリーはびくっと大きく肩を震わせた。
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