そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章18話(318話)

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 ディアの真剣な表情に、ジェリーは息をむ。困ったように私に視線を向けるジェリーに、私はディアに問う。

「今、必要なことなの?」

 ディアはもう一度紙に視線を落して、それから私の目を真っ直ぐに見つめて「恐らく」と呟いてから、私とジェリーを交互に見た。

「あの本は、リザかジェリーにしか触れないのでしょう? 確認したいことがあるの」

 その表情があまりにも真剣で……。私はジェリーに「お願いできる?」と声を掛けた。ジェリーは少し戸惑っていたようだけど、

「リザ姉様がそう言うのなら……」

 と、部屋から出て行き、すぐに本を持って来てくれた。

 ジェリーが手にしている呪いの書を見て、私は苦く微笑んだ。またこうして見る日が来るとは……と頭の中で考えた。呪いの書を見たアル兄様が、「想像以上に分厚いね」と感心したように呟く。

「リザが見たページはどこかしら?」
「ええと……たぶん、ここよ」

 ディアにたずねられて私はパラパラとページをめくって、該当のページを見せた。ディアは本に触れないように視線を落して、じっくりと読んでいく。

「……やっぱり、このページに書いてあるのね」
「……どういうこと?」
「この文章、古代語と現代語が使われているの。三歳のリザとジュリー嬢が読めたのは、きっとそのためね」

 一度言葉を切るディア。誰もがディアの言葉に呪いの書に視線を落とす。触れさえしなければ、読むことは可能のようだ。

「そして、この文章と魔法陣は――……、暴走した魔力と魂の鎮め方が記されているの。『宝石眼を持つ者、浄化の火を放つことで魂を解放せん』とね。……リザ、覚えはない?」

 ヴィニー殿下が私を見つめる。私は迷うことなく、「あるわ」と答えた。

 数ヶ月前のことを思い出し、ぎゅっと拳を握った。

「マザー・シャドウとの対決のとき、月の女神が使った蒼い炎――……。あれが『浄化の火』だと思う」

 拳を胸元に置いて、目を伏せる。今でもはっきりと思い出すことが出来る。ヴィニー殿下がそっと、私の肩に手を置いてくれた。そして、そのまま本の文章に視線を落とした。

「この魔法陣……、範囲の拡大のようだね。カナリーン王国は、この書を作るとき、こうなることを想定していたのかな……?」

 アル兄様が眉間に皺を刻みながら、自分の考えを纏(まと)めるように小声で考えを呟いていた。

「今はまだ、月の女神の力で光の柱を抑えられているけれど、もう時間がないと思います。私は明日、あの光の柱に向かいます」

 私がそう言い切ると、全員の視線が集まった。

「決着をつけます。……これは、月の女神の願いでもあるから」

 そう微笑んでみせる私に、アル兄様たちはなにも言えなかった。私の意志の固さを感じ取ったのだろう。
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