そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章17話(317話)

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「ごきげんよう、お嬢さん」
「ご、ごきげんよう」
「わたくしは、アミーリア・アンダーソン。よろしくね」

 優しく微笑むアミーリア様に、ジュリーは戸惑ったように後退りをした。

「ヴィンセント、彼女のことを任せてもらえないかしら?」
「ジュリー嬢を?」

 驚いたように目を丸くするヴィニー殿下。それから、私のほうを見て、「どうする?」と問うように首を傾げる。私は小さくうなずいて、アミーリア様にジュリーのことをお願いした。

「じゃあ、お願いします」

 とヴィニー殿下が言うと、アミーリア様は顔をパッと明るくさせて、ジュリーの手を
取った。

「さぁ、こちらにいらっしゃい、お嬢さん」

 アミーリア様はジュリーと手を繋いで部屋から出て行った。パタンと扉が閉まってからブランドン様が感心したように口にする。

「こりゃ驚いた。銀髪・黄金の瞳を持つ者が三人も揃うと壮観だな」

 私とジェリーは顔を見合わせて、眉を下げた。

「さて、さっきの子はジュリー・ファロンか?」

 ブランドン様に問われて、こくりとうなずいた。シー兄様が意外そうにブランドン様を見て、「よくご存知ですね」と口にすると、ブランドン様は言葉を続けた。

「国のことは大体耳に入るからなぁ。クリフ様から多少説明もされたし」
「ひいおじいさまから……?」

 クリフ様の名が耳に届き、驚いて目を丸くした。クリフ様、どんな説明をしたのかしら……?

「俺たちがお前たちと合流したのは、子どもたちだけで無理をさせないためだ。まぁ、基本的には好きにさせるけどな」

 ワハハ、と腰に手を当てて豪快に笑うブランドン様に、シー兄様が嫌そうに眉をひそめる。

「『子どもたちだけで』って、オレ成人しているんだけど……?」

 恐らく私たちの保護者としてついて来てくれたであろうシー兄様。保護者としてしっかりと役割を果たそうと考えていたのだろうけど……、ブランドン様はシー兄様の肩をバシバシ叩きながら、

「なにを言っているんだ、シリル。俺らにとっても、マリアたちにとっても、子どもは子どもだ」

 と、きっぱり言い切ったブランドン様に、シー兄様は目を見開いてそれからふっと表情を柔らかくして、「まいったなぁ」と後頭部に手を置いた。

 その様子を少し羨ましそうに見るディアに、シー兄様が気付いたのか彼女に声を掛けた。

「……そういえば、クラウディア王女は古代語が得意でしたっけ。これ、読めたりします?」

 シー兄様は自身の胸ポケットから一枚の紙を取り出した。

「これは……?」
「王妃殿下から預かったんだ」

 王妃殿下から……? 一体、どんなものが記されているのだろう?

「古代語が得意な人に渡してって、言われていたんだ」

 ディアは迷うように私たちを見た。王妃殿下からのものだからだろう。

「たぶん、この中で一番、クラウディア王女が古代語に詳しいよ」
「僕らが読めるのは魔術に関係するところだけだからね」

 アル兄様とヴィニー殿下にそう言われて、ディアはその紙を受け取った。

「……では、僭越せんえつながら……」

 ディアは紙を開いてそのまま視線を下げる。そして、内容を確認するとジェリーに顔を向けた。

「『呪いの書』、今……ありますか?」

 ジェリーはびっくりしたように目を見開き、それからうなずいた。

「見せてもらえませんか?」
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