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4章

4章15話(315話)

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 ヴィニー殿下は顎に手を掛けながらそう言った。アル兄様と違う場面を……? と考えていると、アル兄様がヴィニー殿下に問いかける。

「ヴィーはどんな未来をたんだ?」

 ヴィニー殿下は少し悩んだように口を閉じ、それから私とジェリーを見る。私たちに関することだとは思うけれど、どんなことなのかは想像も出来なかった。

「ジュリー・ファロンの力が必要になる」

 ――そう断言するヴィニー殿下に、この場にいた全員が驚いたように息をんだ。

 私はきゅっと拳を握って、声が震えないように気をつけながら、ヴィニー殿下に尋ねる。

「ジュリーの力が必要とは、どういうことですか?」

 その言葉を聞き、ヴィニー殿下はふっと表情を消し、無表情になった。

「……昔のヴィーのようだ……」

 アル兄様の言葉に、ヴィニー殿下が昔、こんな表情を浮かべていたことがあったのかと驚く。私の問いに対し、ヴィニー殿下は淡々とした口調で「きみたちは三人で、ひとつのようなものだから」と答えた。

 ……それは、月の女神が魂を三つにわけたことに関係しているのかもしれない。あの夢が本当にあったことだったのなら――……。私も、ジェリーも、大きく目を見開いて彼を見ていた。

「ジュリー嬢の力が借りられるかどうか、聞いて来るよ」

 と、この部屋から立ち去ろうとするヴィニー殿下に、シー兄様が声を掛ける。

「時間掛かるんじゃないのか?」

 ヴィニー殿下は緩やかに首を横に振り、それから人の良さそうな笑顔を浮かべて、

「大丈夫。転移魔法でサクッと行ってきます」

 と、杖を取り出す。

「魔力は足りる?」
「大丈夫。それじゃあ、ちょっと行って来るね。アルはそのままここにいて。アルを目印にするから」

 アル兄様に聞かれて小さく手を振るヴィニー殿下は、杖をとん、と床に叩くとパッと姿を消した。

 一連の流れを黙って見ていたディアが、目を瞬かせてアル兄様に不思議そうに問いかける。

「転移魔法って、あんなにするっと出来るものでしょうか?」

 ……私もそれが気になっていた。アル兄様は後頭部に手を置いて小さく息を吐いた。

「ヴィーなら出来る。転移魔法の条件はふたつ。ひとつは『行ったことのある場所』、もうひとつは『目印』があること。実は王都にも結構あるよ、転移の魔法陣。使える人は限られているけれど」

 アル兄様の説明を聞いて、私は魔塔の魔法陣のことを思い出した。あれも一瞬で移動出来るから、便利なものよね。

「転移の魔法陣は、誰でも使えるわけではないんですね……」

 と感心したようにジェリーが呟く。それから、シー兄様がアル兄様の肩をぽんぽんと叩きながら、「アルを目印にするってどういうこと?」と尋ねた。

「言葉の通りだよ。幼い頃からの付き合いだから、僕の魔力を追いやすいんだって。僕もヴィーの魔力なら追えるし」

 そう言って頬を掻くアル兄様。私たちは驚いたように目を丸くし、それぞれ顔を見合わせた。……魔力って、追えるものなの? 確かに魔力は視ることが出来るけれど……王都からここまでの魔力を辿れるものなのかしら? と思わずアル兄様をじぃっと見てしまった。
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