そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章7話(307話)

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「ところで、シリルたちはどうしてここに? こっちはカナリーン王国の方向だぞ?」

 きょろりと辺りを見渡しながら尋ねるブランドン様に、シー兄様はちらりとこちらを見た。ヴィニー殿下とアル兄様が小さくうなずくのを見て、シー兄様が経緯を説明し始める。

「……あの光の柱、そんなものなのか……」
「……それで、子どもたちだけで……?」

 ここからでもハッキリと見える光の柱。月の女神の力でなんとかその場に留めているけれど……徐々にその力が弱くなっているのがわかる。

 アミーリア様は不安そうに頬に手を添えて私たちを見た。……成人しているのはシー兄様だけだから、そう思ったのだろう。

「おばあさま、オレは成人していますよ……」
「あら、わたくしから見たらまだまだ子どもですわ」

 きっぱりとそう言ったアミーリア様に、シー兄様は目を一度瞬(またた)かせて、それから「まいったなぁ」と後頭部に手を置いた。

「あなた、子どもたちだけで行かせるわけにはいきませんわよね?」
「そうだな、我が妻よ。……と言うわけで、我々もついて行こう」
「……えっ!?」

 ビックリして、思わず声が出た。じっとこちらを見つめてくるブランドン様とアミーリア様。その瞳はとても優しくて、本気で私たちを心配してくれていることがわかる。

 ――旅に出ていたブランドン様とアミーリア様とお会いするのは、これが初めてなのに……私のことを、『アンダーソン家』の身内として扱ってくれることに、胸の中がぽかぽかと温かくなった気がした。

「……アル、ヴィー、お前らの意見は?」
「……大丈夫、だと思う」
「うん、未来は変わらない、ハズ」

 ちょっと自信がなさそうに肩をすくめるヴィニー殿下に、首を傾げた。

「ヴィー?」
「いや……うん、あとで確認してみる。なんか、すっごくブレている感じが……」

 ブレている? とヴィニー殿下に視線を向ける私たち。ヴィニー殿下は降参とばかりに首を横に振った。

「とりあえず、休憩を終えたらすぐに出発します。ブランドン様、アミーリア様、よろしいですか?」
「わたくしは構いませんよ」
「俺もだ。ああ、そうだ。アルフレッド、ここら辺の地図は持って来ているか?」
「一応あるよ」
「ちぃと貸してごらん」

 アル兄様は地図を取り出すとブランドン様に差し出した。地図を確認するブランドン様の目は真剣そのもの。そして、自分の地図を取り出すと広げてアル兄様、シー兄様、ヴィニー殿下を呼んだ。

 そして、なにか話し合っている。なにを話しているんだろう? と彼らを見つめていると、トントン、と肩を叩かれた。

「男性陣のことはしばらく放っておきましょう」
「よ、よろしいのでしょうか……?」
「わたくしたちは旅をして、正確な地図を描いていたの。その情報のすり合わせをしているのよ」

 にこりと笑うアミーリア様に、私はディアとジェリーに視線を向けた。彼女たちも困惑しているようだったけれど、アミーリア様がにこやかに微笑んで優しく接してくださるので、私たちはすっかりとアミーリア様のことが好きになっていた。

「わたくしたちはわたくしたちで、休憩しましょうね」

 ……アミーリア様の話し方、なんだかマリアお母様を彷彿とさせる。きっとお母様もこんな風なりたいと思ったのかもしれない。
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