そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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4章

4章6話(306話)

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 それからも馬車の中でいろいろと話した。そして、馬を休ませるために小休憩を取っていたところに、一台の馬車が近付いてきた。通り過ぎるだろうと思っていたら、近くで止まる。

 そして近付いてきた人たちを見て、ヴィニー殿下が「ああ、ここでか」と小さく呟いた。首を傾げると、馬車の扉を開いて外に出て行った。

 窓の外を見ると、アル兄様とシー兄様も外に出ていて、なにかを話していた。アル兄様はこちらに近付いて扉を開けると、「リザ、挨拶しよう」と私に手を差し出した。

 挨拶? と首を傾げながらも、アル兄様の手を取った。ジェリーは少し戸惑っていたようだけど、一緒に降りた。そして、ヴィニー殿下とシー兄様、そしてディアと談笑している方々に近付く。

「おじいさま、おばあさま!」

 アル兄様がそう呼んだのを聞いて、私は目を見開いた。――もしかして、この方々は――前アンダーソン公爵夫妻……?

「おお、アルフレッド。この子かい? お前が言っていたのは」
「はい。リザ、おじいさまとおばあさまだよ」

 手を離して、代わりにポンと私の背中を優しく叩く。

 私はワンピースの裾を持ち上げカーテシーをすると、顔を上げて『おじいさま』と『おばあさま』の顔を見た。

「初めてお目に掛かります。アンダーソン家の養女、エリザベス・アンダーソンと申します」
「あらあら、そんなに緊張しなくてもいいのよ。顔をもっとよく見せてちょうだい?」
「うんうん、可愛い子と聞いていたが、本当に可愛い子だなぁ」

 ほのぼのとした雰囲気をまとっているこの方々が、マリアお母様と王妃殿下の両親なのだと思うとなんだか不思議な感じがした。

「髪色と瞳の色がそっくりだが……きみは……?」
「ジェリー・ブライトと申します、ブランドン様、アミーリア様」

 すっと頭を下げるジェリー。

「ああ、顔を上げてくれ。しかし驚いた。本当にそっくりなんだなぁ」

 と、おじいさまがしみじみと口にする。それからこほん、と咳払いをしてから胸元に手を当てた。

「名前を知っているようだが、改めて自己紹介しよう。ブランドン・アンダーソンだ。そして、こちらが妻の……」
「アミーリア・アンダーソンよ。ブランドンは婿養子なの」

 ふたりが自己紹介をしてくれた。

 おじいさま――ブランドン様の容姿は、はちみつのような金色の髪に、青い瞳。がっしりとした体形で、腰に剣を差していて、ジャックお父様のように屈強そうに見えた。

 対して、おばあさま――アミーリア様は、キラキラと輝くような金色の髪に赤バラのように真っ赤な瞳。王妃殿下とマリアお母様が年齢を重ねたら、こんな方になるのかしら? と想像してしまった。

 アミーリア様は小柄な方で(もちろん私よりは背が高いのだけど)、ブランドン様の傍にいるとまるで騎士と姫のようだった。
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