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4章
4章2話(302話)
しおりを挟むぎゅうっとソルとルーナを抱きしめると、一瞬精霊たちは身体を跳ねさせた。でも、すぐにすりすりと私の肩に甘えてきた。
「私は、ソルとルーナのおかげで助かっているわ。ずっと私と居てくれたら嬉しい」
精霊たちは自分たちもそうだと言うようにうなずいていた。
「……それでも、神は我々を精霊界に残した」
「約束を果たすために」
……約束……? と抱きしめていた腕を緩めて、少しだけ離れてからじっとソルとルーナを見つめる。
「だから、エリザベスはエリザベスのままでいてほしい」
「ソルもルーナも、エリザベスのことが大好きだから」
「独り言」
「終わり」
そう言うと私から離れて、ベッドの定位置に戻った。……明日は早くに出発しないといけないから、もう休まないと。寝る姿勢になっているソルとルーナを撫でてから、「おやすみ」と声を掛けると、ソルもルーナも「おやすみ」と返してくれた。
横になってから天井を見つめる。……まさか、カナリーン王国がこんなに関わってくるとは思わなかったけれど……、私に流れるカナリーン王国の王族の血……いえ、月の女神の血が、導いているのかもしれない。
そっと目を閉じて深呼吸を繰り返した。……どんなところなのだろう。気になるけれど、知ることが怖い気もする。今は気にしないようにしないといけない。早く眠らなくちゃいけないのだから……。でも、どうしてかしら? 早く眠らないといけないと思えば思うほど、睡魔が遠ざかっていくのは……。このままではいけない、とそっとベッドから降りた。
遅い時間で申し訳ないけれど、リタを呼び出してカモミールティーを頼んだ。リタはすぐに用意してくれて、「眠れませんか?」と心配そうに聞いてきた。
素直にこくんとうなずくと、「そうですよね」とリタが眉を下げて微笑んだ。
「緊張されていますか?」
「……たぶん。カナリーン王国のことを考えると、心がなんだか……落ち着かないの」
テーブルの上に置かれたカモミールティーは温かな湯気が揺れている。その湯気をじっと見つめながら、そう口にして心臓の鼓動を確かめるように胸に手を置くと、リタはそっと私の近くにしゃがみ込み、顔を覗くように見上げた。
「リタ?」
「私たちはここで待っています。帰って来たら、どうぞリタにお嬢様が経験されたことをたくさん教えてくださいませ」
「……ええ、約束するわ」
リタはきゅっと私の手を握った。その手が僅かに震えているのを見て、心配してくれているのだろうと思い、胸の中がぽかぽかと温かくなる。私の居場所はアンダーソン家なのだと、教えてくれているみたい。
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