そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章86話(296話)

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 全員着替え終わり、メイクや髪型も整えたあと、ステージに向かう。今日はソルとルーナに最初から魔法を使ってもらう予定だ。ステージに向かう前に、ジーンとディアに話した。

 ふたりは、面白そうね、と乗ってくれることになった。

「それじゃあ、ソル、ルーナ、お願いね」

 精霊たちに声を掛けると、こくりとうなずくのを見て、私たち『舞姫』三人は顔を見合わせて小さく首を縦に動かす。

 ソルとルーナが魔法を使う。色とりどりの花びらが、ぶわっと辺りに降り注ぐ。まるで、観客たちを魅了するかのように。

 私が先頭に立ち、ステージに上がる。続いて、ジーン、ディアの順でステージに上がり、私は左側に、ジーンは右側に移動して、ディアが中央に立つ。

 カーテシーをすると、音楽が鳴り響く。ディアが踊り出すのを確認してから、私たちも動き出す。

 ディアがセンターだから、彼女を目立たせるためのダンスだ。花びらが舞うなか、私たちはステップを踏む。

 ディアが水の魔法を使い、ジーンが風の魔法で周囲に優しい雨を降らせる。私がパチンと指を鳴らすと、虹が掛かった。

 わぁ、と歓声が聞こえた。

 タン、とディアが大きくジャンプをする。それに合わせて、私たちは風の魔法を使い、彼女を浮かせた。空中から、周りを見渡して、ディアはもう一度水の魔法を使う。

 様々な形をした水の球体。動物の形や花の形を模していて、ディアはそれらと共に空中でダンスを披露する。

 魔法を使いながら、私たちもステップを踏む。最後だけは、こうしようと話し合っていた。

 曲の終わりが近付く。ディアはこちらを見て、手を伸ばした。私たちもディアに手を伸ばす。

 ディアが私たちの手を取り、ふわりと着地した。彼女が作り上げた水の球体はパァンっと弾けて、風の魔法でミストになる。それと同時に、曲が終わり、私たちは手を繋いだまま頭を下げた。

 すると、今までよりも一際大きな歓声が耳に届いた。

 顔を上げると、いろいろな人たちが私たちに向けて手を振ってくれている。――良かった、成功だわ!

 繋いでいた手を離し、もう一度カーテシーをすると拍手の音が聞こえてきた。見てくれた人たちが、楽しんでくれているのなら、本当に嬉しい。がんばって練習してきた甲斐があるというものよね。

 私たちは達成感を得ながら、ステージから控室へと向かった。途中、私たちの名前を呼ぶ人たちの声に応えるように、手を振りながら。

 ――『舞姫』としての役割は、これで終了。そのことにほんの少しだけ寂しさを感じながら、私たちは控室に入り扉を閉めると、大きく息を吐いた。

 ――今は、この達成感に浸っていたい。

 なんて、わがままかしらね?
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