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3章

3章83話(293話)

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 身支度を整えて、朝食を摂る。今日はトーストにサラダ、ベーコンエッグにスープだった。美味しくいただいて、ホテルの人たちに挨拶をした。今日は朝のダンスが終わり次第、各自実家に帰るから……ホテルの人たちと会うのはこれで最後。

「今までお世話になりました」

 ジーンがそう言ってにこりと笑い、カーテシーをする。私とディアも同じようにカーテシーをした。すると、ホテルの人たちはすっと胸元に手を当てて会釈をした。

「こちらこそ、舞姫方のお役に立てたのならなによりです」
「本当にありがとうございました。今度、プライベートで予約してもよろしいですか?」
「もちろんでございます」

 ジーンたちは和やかに話をしていた。数分話していただろうか、そろそろ控室に向かわないといけない、とジーンが話を切り上げた。ホテルの人たちは名残惜しそうにしていたけれど、丁寧に頭を下げて見送ってくれた。

「なんだか……不思議な感じですわね」
「不思議?」
「ええ。『舞姫』として建国祭に関わらせていただいて、いろんな人にダンスを見てもらって……。それが今日で終わりなんですもの」
「最後のダンスになるわね。夜には集計された結果も出るでしょうし」
「……集計ってそんなにすぐに終わるものなの?」
「かなりの人数を用意しているみたいだから、大丈夫じゃないかしら?」

 ……一体ジーンはどこからそんな情報を得るのだろうか。少し気になった。ジーンはパーティーにも参加しているみたいだし、きっと友好関係を築いている人が多いのだろう。

 私もいつか、彼女のようにたくさんの情報を得られるようになる日がくるのかしら?

「どうしたの、面白い顔をして」

「お、面白い……?」
「だって、変な表情かおをしていたから。とりあえず、今は最後のダンスに集中しなくちゃあね?」
「……そうね。考え事は後回しにするわ」

 私たちの先を歩いていたディアが立ち止まり、こちらに振り返った。どうしたの? と問おうと口を開いたけれど、控室の前にいる人物を見て目を大きく見開いた。

「お母様、お父様、王妃殿下……!?」

 びっくりして声が裏返った。マリアお母様にジャックお父様が控室の前にいて、私たちに気付くとお母様と王妃殿下はひらひらと手を振った。

 慌てて駆け出す私たち。ディアは「お、王妃殿下……?」と驚いたように呟いていた。

「ごきげんよう、エリザベス。しばらく見ないうちに、背が伸びたかしら?」
「なぁに、リザはまだまだ軽いぞ!」

 ひょいと私を抱き上げてくるりと一回転するお父様に、私はなんだか懐かしい気持ちでいっぱいになった。

 離れていた時間なんて、ほんのわずかなはずなのに……。
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