そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章81話(291話)

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「あまりにも魔力が高かったから、王妃殿下がクリフ様に相談して精霊と契約したとかしないとか……。まあ、多少脚色されているとは思うけど。それで、巫子の力を受け継いだヴィンセント殿下を懐柔かいじゅうしようとした人や恐れる人が増えたみたい。その頃から、狙われていたのだと思うわ」
「そんなに小さい頃から……」

 アル兄様と話しているときのヴィニー殿下は楽しそうだった。でも、他の人と話すときの彼は、少し壁を作っているような気がしていた。

 きっとそれが、ヴィニー殿下の生き残るすべだったのだろう。

「……みんな、いろんなところで戦っているのね……」
「……そうね。さあ、明日の朝、最高のダンスをするためにも、今日はもう休みましょう」

 ジーンがそう言葉を切り、私たちはうなずいた。順番でお風呂に入り、汗を流してから軽くストレッチをしてからベッドに入り込む。

「……ソル、ルーナ、近くで眠ってくれる?」
「いいよ~!」
「ああ」

 ソルとルーナを呼びだして、近くに来てもらった。そっと精霊たちを撫でると、気持ちよさそうに表情を緩めた。

 目を閉じると、あっという間に眠りに落ちた。

☆☆☆

『今日から、あなたたちの名はソルとルーナよ』

 銀髪の女性が手のひらを上にして、ふわふわとした丸い光に話しかけた。

『太陽と月という意味だから、それに合わせた姿がいいかしら?』

 楽しそうに声を弾ませる女性に、寄り添うように男性が彼女の肩にこてんと頭を乗せた。

『なにをしているの?』
『この国には精霊が必要だと思うの。この土地って、魔石が大量にある影響で魔力が歪んでいるから』
『そんなこともわかるんだ?』

 驚いたように目をみはる男性に、女性はくすりと微笑んで『そうよ』と肯定した。

『私はずっとこの“世界”を見ていたのだから。知らないことなんてないわ』

 自慢気に胸を張る女性。それを優しい表情で見つめて、彼女の髪を自分の指に絡める男性。

『あ、姿を定めたみたいね』
『……白いからすに、白銀のうさぎ?』
『うふふ、格好いいし可愛いわね。あなたたちはこの国を守るのが役割よ。私の愛した人たちを、ずっと見守っていてね』

 白い烏に、白銀のうさぎの姿になった精霊たちはその言葉を聞いてこくりとうなずいた。

『ところで、国の名前は決めたの?』
『ああ、みんなで決めたよ。それぞれ好きな名前を出し合って、結局まぜこぜになって『カナリーン』という名前になった』

 国の名前ってそんな風に決まるものなの……? 彼女もそう思ったのか、目を大きく見開いて、それからぷはっと笑い出した。

『なにそれ、人間の考えていることって全然わからないわ!』

 お腹を抱えて笑う女性に、精霊たちは大丈夫? と心配そうに見ていた。

『でも、そうね。カナリーン。うん、呼びやすくていいんじゃないかしら?』
『カナリーン』
『カナリーン?』

 精霊たちが覚えたての言葉を繰り返す。その様子を見て、男性と女性はくすくすと笑っていた。
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