そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章74話(284話)

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 それから朝のダンスを終えてすぐに、エドが控室に顔を覗かせた。

「エド!」
「リザ姉様!」

 私が声を掛けると、エドはぱぁっと表情を明るくして、駆け寄ってきた。どうやらエドは、ヴィニー殿下と一緒に来たみたいで、しっかりと手を繋いでいた。

「やあ、舞姫たち。今日も綺麗なダンスだったよ」
「ありがとうございます、ヴィンセント殿下。お二人でいらっしゃったのですか?」

 ディアが小さく頭を下げてから顔を上げ、胸元に手を置くと手を繋いでいる二人を見て首を傾げた。

「そう。僕は今日、エドとリザの護衛なんだ」
「え?」
「あのね、ぼくが頼んだの! ヴィンセント殿下も一緒に見回ろうって! アル兄様も誘ったけど、今日はダメなんだって……」

 しょんぼりと肩を落としたエドに近付いて、そっと肩に手を置く。まだ、私のほうが背が高いから、少しだけ屈んで彼の目線と合わせた。

「それは残念だったわね。今日は、私とヴィニー殿下と一緒に建国祭を楽しみましょう?」
「うんっ!」

 元気よくうなずくエド。体調は本当に大丈夫そうね、良かった。

「ヴィニー殿下、付き合ってもらってありがとうございます」
「気にしないで、どうせ暇だったから」

 そう言って笑うヴィニー殿下に、私も微笑みを返した。

「それじゃあ、ちょっと待っていてね、着替えるから」
「はぁい」
「それじゃあ、ここで待っているね」

 ぱたんと控室の扉が閉まり、私は急いで着替えをした。ジーンとディアはそれを微笑ましそうに見ていて、「どうしたの?」と首を傾げるとジーンが少しだけ間を置いて口を開いた。

「なんだか、仲良しだなぁと思って」

 意味ありげに口角を上げるジーンに、目をまたたかせた。

「そりゃあ、エドとヴィニー殿下は従兄弟いとこですもの」
「ううん、そうじゃなくて……いや、それもあるけど。ねえ、ディア?」
「ふふっ、そうね。従兄弟というよりも、という感じがするわ」

 ……エドがヴィニー殿下の家族……? アル兄様とヴィニー殿下が親しくしているのを何度も見ているけれど、エドとヴィニー殿下、だけの組み合わせで話しているところは見たことがないことに気付いた。

「エリザベス、これを。まとめてあげるわ」
「あ、ありがとう」

 ジーンが取り出したのは鮮やかな紫色の装飾品が付いているかんざしだった。私の後ろに回り、櫛で髪をかしてから器用にまとめ上げる。

「うん、これでよしっと」
「わぁ、とっても似合いますわ、リザ!」
「さ、行ってらっしゃい。楽しんで来てね」
「ありがとう、行ってきます!」

 控室の扉を開けて、エドとヴィニー殿下の前に姿を現すと、彼らは私を見て一瞬目を見開いて、それからすぐに「似合うね」と「リザ姉様の髪型、可愛いねぇ」と口にした。
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