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3章
3章71話(281話)
しおりを挟むエドはふたりを見て、にこっと笑う。ジーンもディアも、なんだか嬉しそう。
「今度、ぜひ遊びに来てください。みんな、リザ姉様のお友達と会ってみたいって言ってましたし」
「そうなの?」
私は目を瞬かせてエドに視線を向けた。エドは肯定するように首を縦に動かす。
「うん。アカデミーに入学してからのリザ姉様の話も、もっと聞きたいし!」
目をキラキラと輝かせるエドにそっと手を伸ばして、その頭を撫でた。シー兄様も、アル兄様も、それに私も。アカデミーに身を置いているから、きっと寂しいのよね。
「そうね、建国祭が終わったらたくさん話しましょう」
「うん!」
心底嬉しそうなエドを見て、エド宛に手紙をたくさん出そうと決めた。
「長期休暇が待っていますものね」
「そうね。時間が合えばお邪魔したいわ」
「……そういえば、ディアは長期休暇の間、どうするの?」
長期休暇はそれぞれ地元に戻る人が多い。アカデミーの寮はどうなるのかしら? ディアは留学生だから……。
「アカデミーの寮に残るつもりだったけど……?」
キョトンとしたようなディアの表情に、私たちはじっと彼女を見た。ジーンが言いづらそうに眉を下げて、それからおずおずと口を開く。
「あ、あのね、ディア。長期休暇の時は、アカデミーの寮を閉めるのよ」
「え?」
初耳、とばかりにディアが目を丸くする。
――長期休暇はもう目の前だ。
「……エド、お母様たちは夜には家に帰って来る?」
「うん、帰って来るよ。お母様は」
「そう。じゃあ、長期休暇の間にディアと一緒に暮らせないか、聞いてみてくれない?」
「わかった。お母様に聞いてみるね!」
エドが明るくそういうと、ハッと我に返ったディアがおろおろとし始めた。アンダーソン邸は広いし、ディアがひとり、長期休暇の間に暮らしても問題ないだろう。そう判断して、エドに声を掛けたのだ。
「そんな、迷惑では……?」
「私は全然。アンダーソン邸、広いし、使っていない部屋たくさんあるのよ」
「クラウディア王女と遊べたら嬉しいな!」
「リザ、エドワード様……」
ディアがちらりと私たちを見て、それから「ありがとう」と微笑んだ。
……アル兄様とヴィニー殿下の言葉が本当なら、この長期休暇の間に、シー兄様とディア、少しは進展するかもしれないわね……。
どう進展するのかは、わからないけれど。
「それじゃあ、失礼しました」
「エド、ゆっくり休むのよ」
「はぁい」
エドは私たちに向かってぺこりと頭を下げると、控室から出て行った。私たちは軽く手を振りながら彼を見送った。
ぱたんと扉が閉められて、私たちは互いに顔を見合わせた。
「長期休暇のことは知っていたけど、アカデミーの寮のことまでは知らなかったのね?」
「ええ。……もしかしたら、聞いていたかもしれないけれど、ダンスのことで頭がいっぱいだったし……」
頬に手を添えて、眉を下げるディア。……確かに、建国祭のことで頭がいっぱいの時に聞いていたら、アカデミーの寮のことは頭の隅に追いやられるかも、と思った。
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