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3章
3章70話(280話)
しおりを挟む空は晴天。エド、ちゃんと見ていてくれるかな? と視線だけを動かす。残念ながら、エドの姿は見つけられなかった。
そのうちに、音楽が鳴り始める。その音楽に合わせて、身体を動かす。ダンスのステップを踏んで、ディアが大きくジャンプをした。
「ソル、ルーナ!」
私の声にソルとルーナが魔法を使う。彼女の属性に合わせて、水の魔法だ。水の球体がふわふわと彼女と共に舞う。ディアが空中で一回転してから、着地した。ふわふわと浮かんでいる水の球体のひとつをふよん、と突いた。
それが合図のように、数多くの水の球体がパァンっと弾けた。
ミストのようなものが観客に降り注ぐ。狙ったかのように虹も出てきた。私たちはぎゅっと手を握って、次のステップを踏む。ジーンが私に目配りしてきたから、小さくうなずいた。
「――お願い」
「みんなを乾かして」
小声でつぶやく私たち。その願いを叶えるように、ふわりと温かい風が濡れた人たちを包み込み、濡れた服や髪を乾かした。
手を離して、もう一度ステップを踏み、ディアを真ん中にして彼女から少し下がった場所で足を止め、ポーズを決める。音楽もそこで止まった。何度練習しても、最後まで気を抜けないわよね、ダンスって。
ポーズを解いて、丁寧にお辞儀をするとわぁぁあ、と歓声が聞こえた。
みんなに手を振りながらステージから控室へ戻る。控室に入り、みんなでハイタッチをした。
「良い感じだったよね!」
「うん、ディアの回転すっごく綺麗だった!」
「あ、ありがとう……。精霊たちの魔法のおかげで虹も出たわね」
きゃあきゃあとはしゃぐ私たち。すると、ノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ」
ジーンが一番に反応して、声を掛ける。ガチャリと扉が開いて、ひょこっとエドが姿を見せてくれた。
「エド!」
「リザ姉様!」
ぱぁっと表情を明るくして、エドが私ことを呼んだ。パタパタと彼に近付いて、エドの手をぎゅっと握る。
「体調は大丈夫?」
「うん、もうすっかり! せっかくのお祭りなのに、風邪ひいてあんまり見られなくて残念……」
しゅん、と項垂れるエドに、彼の頭をくしゃりと撫でた。
「建国祭はまだ終わっていないわ。明日、体調が大丈夫そうなら、一緒に見て回ろう?」
「本当っ? わーい、楽しみにしてるね!」
目をキラキラと輝かせて、エドが笑う。その笑みを見てそっと彼の頬に手を触れさせた。
うん、熱はないみたいね。
「今日は屋敷に戻ったら、手洗いうがいをしてゆっくり休むのよ」
「うん! あ、リザ姉様のお友達にも、挨拶していっていい?」
「もちろんよ」
入口近くに居たエドを招き入れて、ジーンとディアの前に立たせた。
「えっと、とても素敵なダンスでした。ジーン嬢、クラウディア王女」
ジーンとディアはきょとんとした顔をした。エドの言葉に、ふたりは視線を交わしてそれから「ふふっ」と表情を綻ばせた。
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