そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。

秋月一花

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3章

3章69話(279話)

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「それじゃあ、髪は赤いリボンでまとめましょうか」
「お願いしてもいい?」
「もちろん!」

 ディアはさっとヘアブラシをジーンに渡した。彼女が「ありがとう」とそれを受け取り、私の髪を梳く。ディアはなにかを探しているのか、ごそごそとした音が聞こえた。

 毛先から徐々に徐々に上に。全体の髪を梳いて、二つに分けた。きゅっと高いところで纏めて、ゴムで止めたところを隠すように、ディアが選んだリボンを巻いていく。

 ディアが選んだのは赤いリボンに金色の糸で刺繍がされていたリボンだ。

「アンダーソン家の色でしょう?」

 と悪戯っぽく笑うディアの表情が楽しそうで、私まで笑みを浮かべてしまった。

「アンダーソン家の赤い瞳に、金色の髪。リザの目も黄金色だから、似ていると言えば似ているわよね」

 ディアが頬の横で両手を合わせながらそう言った。

「だから、赤いリボンに金色の刺繍を見ると、リザが思い浮かぶのよ」

 アンダーソン家の色で、私が思い浮かぶ……? パチパチと目を瞬かせてディアを見ると照れたように笑っていた。

「確かにそうかも。小物としてよく赤色を使っているし……」
「なんだか安心するのよね。赤色を使っていると」

 お母様たちのことを思い浮かべて、心の中がじんわりと温かくなるのを感じた。それと同時に、ぴょこりとソルとルーナが姿を現した。

「お手伝いする?」
「魔法使うか?」

 どこかワクワクとしているような精霊たちを見て、私はジーンとディアに視線を向けた。彼女たちはこくりと首を縦に動かす。

「それじゃあ、お願いしようかな?」
「任せて!」

 ぱぁっと嬉しそうに声を弾ませるルーナに、ふふっと笑い声が漏れた。

 ジーンに任せていた髪型は、綺麗なツインテールになった。

「結構きつく縛ったけれど、頭は痛くない?」
「大丈夫!」
「良かった。似合っているわ、エリザベス」
「ありがとう。よーし、がんばろう!」

 メイクケープを外して畳んだあとにぐっと拳を握って気合を入れると、ジーンもディアも私の手を包み込むとこくりとうなずいた。

 エドが楽しんでくれるように、そして観ている人たちも楽しんでもらえるように。私たちの最善を尽くそう。

「そろそろお願いします」

 控室の扉がノックされて、言葉が掛けられた。

 私たちは顔を見合わせて、もう一度うなずき合う。

「今行きます!」

 座ったまま声を出すと、ジーンとディアが手を離す。そしてそのまま、手を差し伸べる。二人の手を取って立ち上がり、ステージに向かった。

 ステージは高いところにあるから、ほんの少し目に魔力を流して辺りを見渡す。エドと
アル兄様たちの姿を見つけて、ホッと息を吐いた。

 ――エドは初めて見るのだもの。気合を入れないとね!

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