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3章
3章58話(268話)
しおりを挟む多少、心の中はモヤモヤしていたけれど、カインに持って来てもらったプレゼント用の箱にアミュレットを入れて、きゅっとリボンを結んだ。
ジェリーにお願いして、これを渡してもらおう。このアミュレットが、ジェリーのご両親を護ってくれるといいな。
「……大丈夫ですか、エリザベスお嬢様」
「うん、大丈夫。さて、と。そろそろ行かないとね」
ジェリーはきっと、私のことを待っているだろうから。
私はカインに送られて、控室まで戻った。
中ではジーンたちが話しているようで、盛り上がっていた。
「ずいぶん、楽しそうね」
扉を開けて中の様子を見てみると、三人は私に気付いた。声を掛けて中へ入り、扉を閉める。
「ジュリーの刺繍がすごいのよ、ほら!」
ジーンがリボンを見せてくれた。花の刺繍が全体に……。これを、この短時間でやり終えたの……?
「すごいわね、ジェリー」
「気が付いたら……、こんなことに。集中しすぎたみたいです」
「いや、本当にすごかったわよ。あんなに高速で刺繍する人、初めて見たわ」
ジーンがしみじみと呟いた。ディアもうなずいている。
「……あ、ディアはこれを買ったの?」
「ええ……。というか、シリル様に買っていただいたというか……」
ディアは少し眉を下げた。シー兄様がディアにプレゼントしたようね。トスジャグリングに使うボール。三個。
「『リザと仲良くしてくれているお礼に』だそうよ」
「シー兄様……」
今度は私が眉を下げた。アンダーソン家の人たちは、相変わらず私に優しい。その優しさに、私はちゃんと恩返し出来ているかな……? とちょっと不安になる時もある。
「愛されているわね、エリザベス」
「……うん。あ、そうだ、ジェリー。これを」
私はジェリーに小箱を二つ渡した。
「これは……」
「ブライト家のご両親に渡してちょうだい。結婚記念日、おめでとうございますって」
「わかりました。絶対にお渡ししますね」
ぐっと意気込むように小箱を見つめるジェリーに、私はふふっと笑みを浮かべた。
「えっと、長居してしまいすみません。私はこれで失礼しますね」
きっと両親にプレゼントを渡したくてソワソワしているのだろう。私たちがジェリーを見送ると、着替えないといけない時間になった。
今日最後のダンスだ。気合を入れていこう。
そして、気付いたことが一つ。
ダンスをしていると……ううん、体を動かしていると、あまり考え事をしなくても良いということ。
さらに一つ。……時間があると、どうしても考えてしまうこと。
夜のダンスが終わり、ホテルに戻って汗を流す。湯船に浸かっていると、ハンフリーさんの言っていたことを思い出してしまう。
私が月の女神の生まれ変わりだという、信じられないことを。ソルもルーナも否定しなかった。精霊たちは違うことはきっぱりと言い切るから、本当のことなのだろう。
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